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社長ブログ 人材コンサルタント25年史

「元暴走族専務に感謝」

「元暴走族専務に感謝」

昔、お取引いただいた

ある靴メーカーさんの

専務さんとの出会いの話を書きます。

当時、営業ウーマンだったKちゃんに同行して連れていかれたのは

足立区の渋い駅から徒歩15分ぐらい

住宅街の中にある古い社屋でした。

外階段で二階に上がり

職人さんが靴を作っている作業場を通り抜け

応接間と言うか事務部屋に通されました。

私:「おい、こんな金の無さそうな会社に連れてきやがって、俺の人件費返せ!」

Kちゃん:「ひどい! 折角の新規アポだから、そんな事言わないでくださいよ」

私:「バカヤロー! こんなボロボロの会社に人材を紹介できると思うか?」

そんな失礼な会話をしていると

色黒でヒゲづら、ジーンズを履いた40代前半ぐらいの男が

入って来ました。

名刺交換したら、この男が専務であることがわかりました。

私:「こりゃダメだ。求人は断って早く帰ろう」 と思いました。

一応普段通り、会社の現状、求人背景などからヒアリングに入りました。

専務:「うちは見ての通り50人ぐらいの小さな会社だが、いい靴を作ってるつもりだ。

   高い靴じゃない。ここにあるような大衆的な靴だけど、デザインや作りの工夫で

   結構売れるものもある。

   この靴を、全国を飛び回って売ってきてくれる営業マンを3人ぐらい欲しい。

   営業マンが足りない」

私:「えー、全国飛び回る! 出張だらけですか?」

専務:「1ヶ月の半分ぐらいな」

私:「そりゃ相当大変ですね」

専務:「大変なのは靴のサンプルを、大箱に入れて持ち歩くことだ。

   サンプルを見せないと靴店は相手にしてくれない」

我々:「えー! その箱は何キロあるんですか?」

専務:「靴を入れたら、20キロ以上だ」

我々:「えー! 重いですねー。そんな営業、誰がするんですか?」

専務:「誰がするって、うちの営業マンは全員やってるよ!」

Kちゃん:「いやー厳しい営業ですね。これまでは、どうやって営業マンを採用したんですか?」

専務:「これまでは、元暴走族とか俺や社員が知ってる荒くれ者ばかりだ」

Kちゃん:「えー! 暴走族ですか? 専務も元暴走族ですか?」

*Kちゃんは天然で、このような質問を平気でする人です。

専務:「俺の話はどうでもいいだろう! あんたたち、人を紹介してくれるんだろう?」

私:「はい、ですが紹介するには、お金がかかりますよ」

専務:「幾らだよ?」

私:「一人当たり前金と成功報酬を合わせて80万円ぐらいです」

専務:「高いなー。三人まとめて頼むから半額にしろ!」

私:「そんな事できるわけないじゃないですか! 絶対値引きしません!」

専務:「兄ちゃん、いい商売だな。仕方ねーな。じゃあ初めは試しに一人頼むよ」

私:「いや、頼まれても断るかもしれませんよ」

専務:「なに! それはどういう意味だ?」

私:「K、これから雇用条件聞くから、求人票を埋めてくれ」

私:「専務、前金をいただく以上は、ご紹介できる可能性があるか? 確認しなければいけません。

  事前に御社の雇用条件をお聞かせください。」

専務:「あんた随分偉そうだな」

私:「紹介できなければ、御社にご迷惑がかかりますから、宜しくお願い致します。」

こんな感じで、給与や福利厚生など諸条件のヒアリングをしました。

Kちゃん:「専務、お休みは年間で何日ぐらいあるんですか?」

専務:「うー、計算しないとわからんが、年間70日ぐらいだ」

我々:「えー! そんな少ないの聞いた事ないですよ!」

専務:「そんな事知らねーよ。中小企業はこれぐらいが当り前だろ!」

私:「専務、申し訳ありませんが、年間休日70日ではご紹介できません。労基法違反ですよ!」

専務:「紹介できないとはどういう事だ!」

私:「はい。それでは応募する人がいませんよ。

  専務や社員の方の知り合いなら、その条件でも採用できるかもしれませんが

  月の半分は出張、20キロの靴箱を持ち歩く重労働、おまけに年間休日70日。

  普通の人は応募しません!」

専務:「あんたなー! 

  初対面で若造のくせに、偉そうな事ばかり言いやがって。

  休みが何日あったら紹介できるんだ? 言ってみろ!」

私:「うーん、最低100日です!」

専務:「100日も! うーん・・・」

私:「宜しくご検討ください。」

こんな感じで逃げるように帰途に着きました。

私:「K、お前、この会社は絶対に厳しいぞ。受注するなよ!」

Kちゃん:「そうですね。私も紹介する自信がありません」

それから1週間後か2週間後でしょうか?

Kちゃん:「武谷さん、あの専務さんから電話があって

    年間休日を100日にしたそうです!」

私:「うっそー! ほんとか?」

Kちゃん:「はい、他の役員も説得して100日に変えたそうです!」

私:「あの専務、本気だなー」

Kちゃん:「ここまでされたら断れませんよ。専務がかわいそうです!」

私:「わかったよ。100日でも難しい求人だけど、やるしかないな。受注して来いよ」

と、本気の専務さんのおかげで

こんな予想外の展開になりました。

まさか、年間休日70日を100日にするとは・・・。

その2~3ヵ月後

Kちゃん:「武谷さん、あの靴屋さん、決まりました!」

私:「えー! ほんと? どんな人?」

となり、その後リピートオーダーをいただきました。

それからまた間もなく

Kちゃん:「武谷さん、また決まりました!」

となり、短期間で三人の方が入社されました。

その後、半年以上が経過しました。

Kちゃん:「今日、専務に聞いたら、皆さん凄く頑張っているそうですよ!」

私:「すげーな、あの会社。専務の面倒見の良さかな?」

Kちゃん:「暴走族が更生して一生懸命働いている会社ですから

    絶対いい会社ですよ。きっと専務がいい人だからですよ!」

私:「そうだな。会社を見た目や第一印象だけで判断しちゃいかんな」

Kちゃん:「そうですよ。見た目で判断しすぎですよー」

私:「すまん、俺が悪かった」

専務

見た目や第一印象で判断してしまい

誠に申し訳ございませんでした。

入社された方々を

大切に育てていただき

誠にありがとうございます。

専務のような

ハンパない本気の経営者を

応援させていただきます。

「名もない草も

実をつける

いのちいっぱいの

花を咲かせて」                                           みつを

合掌。

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プロフィール


武谷 広人
人材ビジネス経験の蓄積と、自らのトップマネジメント経験を強みとする。経営幹部から専門職まで約500件の案件を成功に導く。

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