「内定辞退した企業にコッソリ入社」
以前
ある人材紹介会社で
部長職まで務めていた優秀なAさんと
2~3年の間に
二度・三度、ご相談させていただきました。
Aさんは
人材コンサルタントとしての実績も
マネジメント経験も豊富ですから
X社様、Y社様、Z社様からも
次々と内定を獲得されました。
しかし
現職からの引き留めも強く
一度目は三社とも
内定辞退という結果になりました。
Aさん:「武谷さん、内定辞退という結果になって、大変申し訳ございません。」
私:「いやいや、最初から、Aさんは辞められないと思っていましたよ。」
Aさん:「そうですか。もし、再度ご相談する機会があれば、必ず内定受諾します。」
私:「いやいや、とにかく現職で頑張ってください!!」
Aさん:「ありがとうございます。現職で死ぬ気で頑張ります!!」
という事で、お別れしました。
ところが、1年半後に再度
Aさんからご連絡をいただきました。
Aさん:「武谷さん、実はその後、やっぱり転職して、今は●●●という会社で働いています。」
私:「なんですと!! あれだけ現職で頑張ると言ったのに、結局辞めたんですか?」
Aさん:「済みません。やっぱり、上司との人間関係を修復できませんでした。」
私:「えー!! それで今回はどんなご相談ですか?」
Aさん:「今の会社の人間関係は良好ですが、年功序列で年収も安く、やりがいがありません。」
私:「Aさん、今の業績はどれぐらいですか?」
Aさん:「直近半年で4000万円以上やっています。」
私:「結構やってますね。それで年収はどれぐらいですか?」
Aさん:「800万円ぐらいです。更に来期も上がりませんから、やりがいがありません。」
私:「それは安いですね。それで今後は、実力主義でインセンティブ制度の会社がいいですか?」
Aさん:「はい、固定給もインセンティブも高い会社を希望します。」
私:「うーん、両方高い会社は少数です。厳しいですが、今のAさんの実力では難しいですよ。」
Aさん:「それでも何とか、固定給が高く、インセンティブも高い給与制度の会社を紹介してください。」
私:「それではAさん、前回内定辞退されたY社様はいかがでしょうか?」
Aさん:「内定辞退したのに、再応募できますか?」
私:「はい、Aさんが腹を決めて応募されるのであれば、再度面接していただけると思います。」
Aさん:「ありがとうございます。是非、Y社様に再応募させてください!!」
という事で
1年半前、内定辞退されたY社様に
Aさんは再応募されました。
そして、寛大なY社様から
めでたくAさんに
2回目の内定を出していただきました。
私:「Aさん、おめでとうございます!! 内定されて良かったですね。」
Aさん:「ありがとうございます。しかし、希望条件には届かず、辞退させていただきます。」
私:「はー!! どういう事ですか?」
Aさん:「前回より、ベース年収が200~300万円上がると思っていましたが、期待はずれでした。」
私:「はー!! わずか1年半しか経過しないのに、そんなに上がるわけないでしょう!!」
Aさん:「私なりに、この1年半、成長したと思いますので、提示年収に対しては残念です。」
私:「はー!! Y社様としては、最高評価の年収提示ですよ?」
Aさん:「済みません。ただ、これでは納得できませんので、辞退させていただきます。」
私:「同じ会社に応募されて、二度目の内定辞退。もう三度目はありませんよ。」
Aさん:「済みません。条件が合わないので、仕方ありません。」
私:「再選考していただいたY社様に対して、どんなお気持ちですか?」
Aさん:「済みません。再選考いただいたのは感謝ですが、条件が合わないので辞退します。」
私:「今回、Y社様は、快くAさんの再応募を受け入れて、2回目の内定を出してくださいました。」
Aさん:「いやー、もっと好条件のオファーだと思っていました。」
私:「Aさん、心からの感謝や謝罪のお気持ちは?」
Aさん:「済みません。感謝していますが、条件が合わないので辞退します。」
私:「わかりました。Aさん、二度と私に相談しないでください。Aさんを企業に紹介できないので。」
Aさん:「・・・・・。」
というように、Aさんとは残念なお別れでした。
再度選考していただいたY社様の責任者の方々も
「いやー、内定辞退したのに再応募して来て、2回目の辞退とは、採用しなくて良かったです。」
というように、大変申し訳ございませんが
あきれられました。
それから数年が経過した先日
昔、Aさんの上司だった社長さんと
飲みに行きました。
そこで、社長さんから
驚きの事実を伺いました。
社長:「武谷さん、大変迷惑をかけたAの事ですが、今はX社で働いているそうですよ。」
私:「えー!! X社は、1回目の相談の時にご紹介して内定した会社ですが?」
社長:「そうですよね。メンバーから聞いた話では、AはX社で働いているそうです。」
私:「なるほど。さもありなんですね。」
社長:「Aは昔からその点がネックで、良い所もあるのですが、私も振り回されましたよ。」
私:「決して悪い人ではありませんし、魅力もあるだけに残念ですね。」
社長:「私も評価していたので残念です。信頼されるために、筋を通す生き方をしてもらいたいです。」
私たち人材コンサルタントとしては
お付き合いする企業と
ご相談いただく人財との
信頼関係を大切にしたいですね。
人と人ですからね。
「批判はしたけれど
自分にできるだろうか」 みつを
合掌。