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「この30年、転職意識の歴史的変遷」

「この30年、転職意識の歴史的変遷」

私がRAを経験した後

26歳で最年少キャリアアドバイザーになった33年前は

日本では世相的に 「転職に対する罪悪感」 があった。

第二新卒の若者が転職するなど

周囲に言いにくい話だった。

まさに 「石の上にも三年」 は頑張りなさいという世相だった。

人材紹介会社の敷居も高く

気軽に相談に来るような人はあまりいなかった。

登録するには相当な勇気や決意が必要だったと思う。

職務経歴書を見ても

20代で複数の転職歴がある人は少なかった。

そういう人は、遠慮して相談に来なかったのだろう。

実際、20代で転職歴がある人は、書類選考でほとんど不合格になった。

20代で3社とか4社経験の人は

ご相談のみで求人紹介はできなかった。

転職歴が多い人を

採用する求人企業が無かったのだから仕方ない。

一方で求人企業サイドは

昔から中途採用を行っていた大企業もあったが

エンジニアを必要とする製造業やIT企業が圧倒的に中心だった。

しかし、多くの大手上場企業に新規開拓のTELアポをしても

「中途採用? 

そんなの採用しなくても

うちは毎年優秀な新卒を採用しているから必要ないよ。」

と自慢気に言う人事担当者が多かった。

まだ終身雇用や年功序列の文化が色濃く残っていた。

この世相を大きく変えたのは、バブルとバブル崩壊だ。

バブルよって人材採用需要が過熱し

新卒で入れなかった大企業にも

中途で入れるようになった。

第二新卒採用ブームが起きたのも、この頃だった。

その後一転して、1993年あたりからバブル崩壊の大不況になった。

初のリストラに踏み切る企業が急増し

終身雇用や年功序列が崩壊した。

従って、採用市場にバブルとバブル崩壊が与えた影響はとてつもなく大きい。

リーマンショックとは比較にならない大きな影響を与えた。

日本の金融機関が巨額の負債を長期に渡り抱えたバブル崩壊と

それが少なかったリーマンショックとでは

経済に与えるインパクトが全く違った。

実際、2008年のリーマンショック後は

2010年1~2月から求人件数が回復し始めたが

バブル崩壊時は回復の兆しが出るまでに5年以上要している。

こんな歴史があって

日本経済が衰退し

終身雇用や年功序列の文化が崩壊した。

この期間を 「失われた20年」 と呼ぶ人もいる。

更に、グローバルスタンダードと言う名の欧米規格統一主義が始まり

ボーダレスの経済競争社会になり

雇用や採用に関しても欧米文化が入ってきた。

1 新卒より中途採用こそがスタンダードで転職するのは当たり前

2 終身雇用や年功序列ではなく能力と結果で評価し、ローパフォーマーには辞めてもらう。

3 企業は中長期的な観点で社員を育てなくなり、社員のロイヤリティーは顕著に低下した。

それと共に 「転職に対する罪悪感」 は払拭され

むしろ 「転職できる人は優秀」 という雰囲気すらある。

大手人材紹介会社や転職サイト運営会社も

この雰囲気を利用し助長したと言われても仕方ない。

一番の課題は

キャリア形成に関する本質的な議論が成熟していない事ではないかと思う。

ここ数年、キャリア形成やキャリアコンサルティングに対する関心が高まり

それに取り組むコンサルタントも増えており

ようやくスタートラインに立ったように感じている。

以前は

単純に 「転職は得か損か?」 という感じで

「貴方は何が強みで何を目指し、どのようなスタイルで働きたいのか?

どのように社会に貢献し、結果としてどれぐらいの収入を得たいのか?」

このような議論がされず

何となく転職する人が増えてしまった印象だ。

自分なりのキャリアプランを持っていれば

その目的のために必要ならば転職もするし

必要ないのであれば

今の会社で我慢もする。

我々、人材紹介コンサルタント(キャリアコンサルタント)としても

そのような本質を常に考えて

ご相談に応じるべきではないかと思う。

「にんげんはねえ

追いつめられると

弱いもんだな

ひとごとじゃない 

自分のこと」                                      みつを

合掌。

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プロフィール


武谷 広人
人材ビジネス経験の蓄積と、自らのトップマネジメント経験を強みとする。経営幹部から専門職まで約500件の案件を成功に導く。

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