「お父様の遺言」
ベテランコンサルタントのAさんですが
昔は切れやすいタイプだったそうです。
私:「若い時のAさんは
どんな感じのプレイングマネージャーだったのですか?」
Aさん:「良く言えばエネルギッシュで
悪く言うと自分勝手でした。
メンバーの成長のために怒っていると
勘違いしていたような気がします。
実は、怒っている自分に
酔っていたのではないかと思います。」
私:「なるほど。
それは私にも心当たりがあります。
今のAさんは変わったんですか?」
Aさん:「完全に変われたとは思っていませんが
怒る前に考えるようになりました。
結果として、直情的に怒る事は少なくなりました。」
私:「それは大きな進歩ですね。
なぜ、自分をコントロールできるようになったんですか?」
Aさん:「父親の遺言です。」
詳しくは書けないのですが
当時、重病だったお父様から
貴重なお話を聞かれたそうです。
・お父様は、大変エネルギッシュで、苛烈な経営者であった。
・お父様は、周囲の人を感情で怒ってしまったために、傷つけたり、遠ざけたりしてしまった。
・その結果、お父様は、大切な人たちとの人間関係を損ない、孤独になってしまった。
・だから、お父様は反省されて、「自分の感情に任せて怒るな」 という遺言をAさんに残された。
Aさんは、お父様の遺言を聞かれてから
「アンガーマネジメント」 の重要性に気づかれて
一時の感情に任せて怒らないように
努力されて来られたそうです。
Aさんから、このお話を伺った時に
お父様のAさんに対する深い愛情が伝わって来て頷くばかりでした。
それと同時に
「お父様はどれほど孤独で寂しかっただろうか?」 と。
「あんなに元気でやり手だったオヤジが
実は、そんな事を感じていて
最後にそんな本音を言うなんて。」
Aさんの気持ちもいかばかりだったかと。
そんな貴重なお父様の遺言だけに
Aさんの心に響いたのだろうと想像します。
ただ、「怒る」 と 「叱る」 と 「意見を述べる」 とでは
全然違うと考えます。
「怒る」 は感情。
「叱る」 は相手のためを思って。
「意見を述べる」 は物事を前向きに進めるため。
Aさんには
「アンガーマネジメント」 を継続していただきながらも
ただ抑制するという消極的な態度ではなく
相手や組織のために
「叱る」 とか 「意見を述べる」 という前向きな事は
勇気を持ってやってほしいと思います。
考えている事や感じた事を
要所要所で発信しないと
Aさんの大切な長所がなくなってしまいますからね。
「にんげんだもの」 みつを
合掌。