「数字、数字と言われても?」
先日、ご相談にお越しになった
26歳のAさんのお話です。
大学をご卒業後
準大手人材紹介会社のX社様に
希望に燃えてご入社されました。
現在、入社4年目のRA(リクルーティング・アドバイザー)です。
私:「Aさん、今回はなぜ
ご相談にお越しになったのですか?」
Aさん:「最近、このままでいいのかな?
という気持ちがありまして・・・。」
私:「なぜ、そんな気分になったんでしょうかね?」
Aさん:「自分でもはっきりわからないのですが
人事異動がきっかけかな?」
私:「確かに、昨年10月に人事異動されてますね?」
Aさん:「はい。
製造業界グループから
IT業界グループに異動しました。」
私:「そのようですね。
IT業界は嫌いですか?」
Aさん:「いいえ、そんな事はありません。
製造業界も奥が深くて難しくて
とても楽しかったですが
IT業界もやってみると
これはこれで興味深く
進化のスピードが速くて
おもしろいと感じています。」
私:「そうですか。
IT業界にも興味が持てたのであれば
良かったですね。
でも、それじゃあどうして
『最近、このままでいいのかな?』
という気持ちになったんでしょうかね?」
Aさん:「うーん、上司がかわったからかな?」
私:「確かに、異動すると上司もかわりますね。
前の上司と今の上司との違いって
何かありますか?」
Aさん:「そうですね。
前の上司は伴走者みたいな感じで
たくさん同行してくれましたし
一緒に営業を楽しむという感じでした。」
私:「へー、伴走者ですか?
現場に近い上司というイメージですね?
ところで、今の上司は?」
Aさん:「営業同行はほとんどしなくて
毎日、数字、数字、数字という感じです。」
私:「なんの数字ですか?」
Aさん:「内定金額はもちろんですが
訪問件数、求人件数、紹介件数、面接件数のような数字です。」
私:「なるほど。
当り前と言えば当り前で
上司としては
常に把握しておきたい数字でしょうね。」
Aさん:「私もそれはそう思うんですが
数字だけじゃなくて
前の上司のように
もっと1社1社のお客さんと向き合って
それぞれの会社の魅力を発見して
それをCAに伝えて
決まったら一緒に喜ぶというような
仕事の内容を重視したいんです。」
私:「なるほど。
でも、業績を拝見すると
ずっと目標達成しているじゃないですか?」
Aさん:「はい。
それは最低限の事なので
当り前だと思っています。」
私:「立派ですね。
ところで、今の上司の方はもちろんですが
誰か周囲の人に相談しましたか?」
Aさん:「はい。
思い切って
今の上司に相談しました。」
私:「どんな事を話したんですか?」
Aさん:「数字の大切さはわかりますが
仕事の内容が大事なのではないか?
そこを重視しないと
数字の話だけでは
モチベーションが続かないと言いました。」
私:「それに対して
上司は何と答えましたか?」
Aさん:「仕事である以上
数字は絶対だ。
それをやった上で
仕事を楽しいと思うかどうかは
個々人の自由だ。
お前が楽しみたいと思うなら
自分で楽しめばいい。
そのように言われました。」
私:「何というか
非情なように聞こえますが
グループの業績責任を負っている上司の話も
わからなくはないですね。」
Aさん:「そうですね。
上司は上司でプレッシャーが大きいと思いますし
『数字は絶対だ』 という事も
自覚しているつもりです。
ただ、数字だけで
楽しみたければ勝手に楽しめ
というような姿勢は
メンバーをモチベートすべき立場にある上司が
言うべき事でしょうか?
この仕事のやりがいや楽しさを語り
メンバーと共有する事も
上司の大切な役割じゃないでしょうか?」
私:「はい。
理想はそうだと思います。
ただ、そんな上司だから転職しますか?
前の上司の下に戻りたいですか?」
Aさん:「うーん、そこが悩みで相談に来たんです。
そんな簡単に
前の上司の下に戻れません。」
私:「Aさん、どこの会社にも
色々な上司がいますよ。
私も個人的には
前の上司の方が好きですよ。
でも、今の上司のような人の方が
どちらかと言うと多いのが現実です。」
Aさん:「そんなものですか?」
私:「はい、それが現実です。
特に、規模が大きくなればなるほど、そうです。
御社は、IT業界グループだけでも
50人もいるんでしょう?
そんな大所帯の上司となると
どうしても現場から遠くなって
数字、数字、数字になるのもわかりますよ。」
Aさん:「それはそうでしょうね?」
私:「Aさんが
規模は小さいけれど
とてもハイレベルな仕事をしている
ブティック型エージェントに転職すれば
かなり状況は変わると思いますが
今、決断する勇気と覚悟はありますか?」
Aさん:「それは時々考えます。
しかし、そんなプロフェッショナル集団に
今の自分が参加できるのか?
そんな力が自分にあるのか?」
私:「そうですね。
結論を申し上げると
やってやれない事はないですよ。
Aさんであれば、きっとできる。
でも、26歳の今、決断できますか?」
Aさん:「いやー、そうなんですよね。
それが今なのか?
もう少し先なのか?」
私:「年齢の問題もありますが
それよりも、Aさんの覚悟の問題です。
もう、今の会社では学ぶ事は少ない。
リセットして勝負したい!!
本気でそのように思えたら
その時が天の時だと思います。」
Aさん:「わかりました。
そこまで突き詰めて
考えていませんでした。
今の環境で
もうしばらく働きながら
もっと深く考えてみます。
どうもありがとうございました。」
「しあわせはいつも
自分のこころがきめる」 みつを
合掌。