「ちゃんと言葉にしないと伝わらないよ?」
Aさんは、私と同じ九州生まれの九州育ちです。
就職のため
初めて東京に出て来て
超一流企業の営業マンとして
優秀な業績を上げています。
私:「Aさんは、営業マンにしては
物静かで言葉数が少ないですね?」
Aさん:「私は、営業という仕事は
自分が話す事が中心ではないと考えています。」
私:「では、営業とはどんな仕事だと考えているんですか?」
Aさん:「お客様が求めている事を
しっかり聞いた上で
そのニーズを実現する提案をする事です。」
私:「いい事を言いますね。
同感です。
他に必要な要件はありませんか?」
Aさん:「お客様からの苦情やクレームから逃げない事です。
そんな時こそ
お客様の所に出向いて行って
直接、苦情を伺い
それに対する説明責任を果たし
解決する提案をする事です。」
私:「立派ですね。
普通の営業マンは
クレームから逃げてしまうでしょう。
それによって、お客様の信頼を失ってしまいますよね?
Aさんは、立派ですよ。」
Aさん:「いいえ、当り前の事です。」
まだ若いのに
こんなに真面目でしっかりしたAさんですから
「どこでも合格するだろう」 と思って
3社に絞って
ご紹介しました。
その結果は予想外で
全て面接で不合格でした。
3社の不合格理由として一致していたのは
「何を考え、これから何をしたいのか?
ご本人の本音の熱量が伝わって来なかった。」
という内容でした。
私:「Aさん、済みません。
私の力量不足です。」
Aさん:「いえ、そんな事はありません。
私の覚悟や準備不足ですから
気にしないでください。
正直、初めての転職活動で
先方様のご質問に答えた内容も不十分でしたし
明確な応募動機も述べる事ができませんでした。」
私:「そうですか。
確かに、応募企業からのフィードバックも
そのような内容です。
言葉足らず・説明不足・この人は本気でやりたいのか?
そんな不合格理由でした。」
Aさん:「はい、もっともだと思います。」
私:「Aさん、済みません。
同じ九州人だから
私も、阿吽(あうん)の呼吸のつもりで
Aさんに接していました。
そして、そのまま面接に送り出してしまいました。」
Aさん:「はー?」
私:「今でもお世話になっている元上司で
九州出身の人に
初めて会った時に言われた事を思い出しました。」
Aさん:「どんな事ですか?」
私:「『お前さ、九州やったら
言葉足らずでも
お互い、あうんの呼吸で伝わるやろ?
でもな、それは東京では通用せんからな。
ちゃんと言葉にして伝えんと。
まー、その内わかるよ。
俺も初めは、それで苦しんだから。』
と言われました。」
Aさん:「はー、そうですか。」
私:「私がAさんの事をわかっているから
他の人もAさんの事をわかってくれるだろう。
評価してくれるに違いない!!
そう思い込んで
無防備に紹介してしまいました。
済みません。」
Aさん:「いえー、今回の結果は
あくまで私の責任です。
もっと本気に転職を考え
もっと業界研究もしっかりやって
モチベーションを上げて
面接に臨むべきでした。
申し訳ございません。」
私:「いや、こちらこそ、申し訳ございません。」
Aさん:「私もしばらく考えてみます。
本当に、人材紹介の仕事をやりたいのか?
将来、どうなりたいのか?」
Aさんの転職活動は
無駄ではなかったと思いますが
もっと事前に深く話し合うべきでした。
「わかった気になる」
という事は怖いですね。
結局、私自身が
Aさんの事を全然わかっていなかったという事です。
まだまだです。
「いまから
ここから」 みつを
合掌。