「無理に引き留めるなら労基署に相談するぞ!!」
最近は企業も採用難で苦しんでいますから
一人前の中堅営業社員が辞めると言い出すと
かなり強引な引き留め工作をする会社もあります。
Aさんは前の会社に新卒で入社して
8年も営業職として働いていました。
新卒で入社した同期や後輩がどんどん辞めていなくなる中
一人で必死に頑張っていました。
業績も上げられるようになり
MVP表彰を受けた事もあります。
離職率の高い会社においては
「絶対に辞めてほしくない中堅営業社員」 です。
ただ、Aさんにも我慢の限界があります。
(退職理由)
1 30代営業職で年収350万円程度である。このままでは家庭も築けない。
2 構造不況業界で会社は赤字経営である。
3 創業家一族の傍若無人な経営による混乱が絶えない。
4 取引額の大きな固定客は、年輩社員が独占しており、実力主義ではない。
5 朝8時から終電までのハードワークが続く。
こんな状況の会社なので
普段から上司に
「会社が困るから、お前は絶対辞めるなよ。」
と言われ続けていました。
「会社が困るから」 って言われても
「会社は、Aさんの今後の人生に責任を持てるのか?」
という話です。
私は、Aさんが第一志望の人材紹介会社に内定されてから
「Aさんは、本当に辞められるのだろうか?」
という事が非常に心配でした。
従って、事前に退職交渉に臨むAさんと打合せをして
三段階の退職交渉ヴァージョンをアドバイスさせていただきました。
①円満退職ヴァージョン
⇒ 「暖簾に腕押し」 「糠に釘」 作戦です。
上司からどんなに強く引き留められても
「本当にお世話になりました。
ありがとうございました。
感謝しております。
ただ、退職の意思は変わりませんので
何卒ご容赦ください。」
この言葉を誰に対しても何度も何度も繰り返す事です。
そして、上司が根負けするのを待ちます。
それでもダメなら、次のヴァージョンにアップします。
②本音ぶちまけヴァージョン
⇒ 「私の人生に責任を持てますか?」 作戦です。
「会社の業績も悪いし、将来性も乏しい。
懸命に働いて業績を上げても、年収が上がらない。
このままでは結婚もできないし、子供もつくれないです。
私の人生に責任を持てますか?」
今度は、この言葉を誰に対しても何度も何度も繰り返す事です。
今回のAさんは、何とかこの 「本音ぶちまけヴァージョン」 で
退職を認めてもらう事ができました。
「そこまで言うなら、お前の人生だから仕方ないな。」
と、取締役に言われたそうです。
これでもダメなら、更に次のヴァージョンにアップします。
③「労基署に相談します」ヴァージョン
⇒ 「ここまで申し上げても辞表を受け取っていただけないのですね。
それでは本意ではありませんが、労基署に相談させていただきます。」 最終作戦です。
普通は、 「労基署に相談させていただきます」 と言ったら
どんな会社でもびびって、退職を認めるしかありません。
残念ながら、円満退職はできませんがゲームセットです。
辞表は必ず提出し、上司が受け取らなくても、日付を入れて大切に保管してください。
そして、人事部長宛、郵送で送りつけてください。
辞表のコピーは必ず保管してください。
また、何月何日、上司の誰と、どんな内容の話をしたのか?
そのやり取りの内容を克明にノートに記録してください。
暴力など、ひどい対応をされた場合は、できれば録音してください。
怪我をした場合は、医者から診断書をもらってください。
どこかの議員秘書さんみたいですね。
お互いに、ここまでやりたくないですし
普通はここまで行きませんが
これに近い所まで行っってしまった事例もあります。
その際、社長が最後まで辞表を受け取らなかったので
郵送で送りつけていただき
勝手に引継ぎを始めていただきました。
その方は、約束されたボーナスも支給されませんでしたし
最終出勤日に社長は雲隠れして、何の挨拶も無かったそうです。
もちろん、送別会もありませんでしたが、見かねた社員の方々が
会社の出口まで来てくれて、そこで挨拶してお別れしたそうです。
そうして、ご本人がいなくなったのを確認して
社長がオフィスに現れたとの事なので
開いた口がふさがりませんでした。
この場合も強硬に労基署に行けば
約束されたボーナスは支給されたと思います。
退職されたご本人は、最終出勤日も成約を上げて
会社にお土産を残して辞めたんです。
「なんてひどい話だろう」 と
今、思い出しても腹が立ちます。
社員も経営者と同じ人間であり自由です。
経営者としては、残念な気持ちはわかりますが
最後は
「ありがとう。
よく頑張ってくれたね。
元気でな。」
と言って、快く送り出してあげましょう。
「アノネ
じぶんのもの
おれのものだと
思っているけれど
よくよく
考えてみると
頭の毛一本
じぶんの
おもうようには
ならねんだな」 みつを
合掌。