「俺の会社にために死ぬんじゃない!!」
先日、昔の上司のAさんと飲んだ時の話です。
今は、人材紹介会社を経営しています。
私:「最近、どうですか?」
Aさん:「もう、俺の代わりに経営をやってもらったり
俺のお客さんを徐々に引き継いで
皆にどんどんやってもらうよ。」
私:「そういう事を考える時ですか?」
Aさん:「いつまでも俺がやってしまうと
社員が次のステップに上がれないしな。
俺は俺で好きな事をやるよ。」
私:「他にやりたい事があるならいい事ですね。」
Aさん:「そう言えば、XもYも
武谷(たけや)から紹介してもらったんだよね?」
私:「はい、そうです。
お二人ともお元気ですか?」
Aさん:「去年は二人とも稼ぎ頭でさ
俺より年収高いよ。」
私:「そうですか。
二人とも優秀だし頑張り屋ですもんね。」
Aさん:「うん、頑張るのはいいんだけどな
頑張り過ぎてもな。」
私:「何かあったんですか?」
Aさん:「うん、Yはご不幸があってな
本当にかわいそうだったよ。
だからな、しばらく会社なんかに来なくていいぞ、と言ったんだけど
『自宅にいる方がつらいです。出勤させてください。』
と言うから、出勤だけしてもらったよ。
やっぱり、数か月は仕事にならなかったみたいだけど
最近は少し立ち直って来たから
その内、本来のYの実力が出てくると思うよ。」
私:「そうなんですか・・・。
それは大変でしたね。」
Aさん:「うん、仕事なんかより家庭の方が全然大事だろう?
だから、『仕事の事なんか気にするな』 と言ったんだけどな。」
私:「そうですね。
でも、Yさんが立ち直りそうで良かったです。
ところで、Xさんは病気で入院してましたね?
大丈夫ですか?」
Aさん:「大丈夫じゃないよ。
今回で2回目だからな。」
私:「えー、そうなんですか?」
Aさん:「だから、強制的に午前中は出勤禁止にしたよ。
出勤すると、どうしても仕事してしまうだろう?
だから強制的に禁止にした。」
私:「そうですか。
Xさんはバリバリ仕事しますもんね。」
Aさん:「だからな
『この会社は俺の会社だぞ。
お前な、他人の会社のために死ぬんじゃない!!』
と言ったんだよ。
俺が自分の会社のために死ぬのは仕方ないけどな
社員が俺の会社のために死んだらあかんやろ?」
私:「・・・、なるほど。」
Aさん:「他人の会社のために命かけたらいかんよな?」
私:「はい、そう思います。」
Aさん:「今日は久しぶりにうまい酒だった。
ありがとう。
そろそろ帰ろうか?」
というような会話をしました。
「俺の会社にために死ぬんじゃない!!」
という言葉が
ずっと私の中で響いていました。
「やっぱり、懐(ふところ)の深い人だな」
としみじみ思いました。
昔、この元上司のAさんがまだ20代だった時
人生の大先輩と言うか大先生のNさんにお誘いいただき
新橋の渋くて美味しい焼き鳥屋さん
「ほさか」 に連れていっていただいた時の会話を
思い出しました。
N先生:「うちには将来を嘱望されている若手のホープが三人いる。
誰の事かわかるな?」
私:「はい、何となくわかります。
ただ、その三人の中で親しみはあるんですが
渋すぎてわかりにくい人がいるんですけど
Aさんって、どんな人でしょうか?」
N先生:「A君か・・・。
うーん、A君はな・・・。
懐(ふところ)の深い男だよ。」
22歳だった当時は
「懐(ふところ)が深い」 という意味がよくわからなかったのですが
最近やっと少しわかるようになった気がします。
N先生、最上級の誉め言葉だったんですね。
「俺の会社にために死ぬんじゃない!!」
そんな事を言える経営者はどれぐらいいるだろうか?
沁みるな。
「おかげさん」 みつを
合掌。