「次のステップを目標に動け」
以前、キャンディデートだったAさんは、バリバリの人材紹介コンサルタントでした。
私:「Aさん、将来はどんなキャリアを目指しているんですか?」
Aさん:「将来は、エグゼクティブ層の紹介ができるコンサルタントになりたいですね。」
私:「それならエグゼクティブ層に強い人材紹介会社をご紹介しましょうか?
それとも、いきなりエグゼクティブサーチをやっている会社をご紹介しましょうか?」
Aさん:「いやー、サーチはちょっと自信がないですね。
まだ実力も経験も不足していると思います。
もう少し手前で経験を積む必要があると思っています。」
私:「うーん、サーチ型と登録型では全然違うのですが
何がやりたいのですか?」
Aさん:「サーチ型もできるようになりたいですが
まずは、CxO案件とか高いポジションの高年収求人を得意としている
会社であれば、今のところ人材を探す手法にはそれほどこだわりません。」
私:「へー、まずは高年収求人とか高年収人材を扱う事に慣れたいという感じ?」
Aさん:「そうです。
必要な人材を自分の力で探せるに越した事はないですが
リファーラルでもビズリーチでもキャリアカーバーでも
とにかく高年収求人を決められたらいいんです。」
私:「わかりました。
サーチ型か登録型かという点は本当は大きな分かれ目なんですけど
貴方がまずは高年収層求人と高年収人材に慣れたいと言うのであれば
ちょっと幅広くご紹介先を考えてみますね。」
Aさん:「はい。宜しくお願い致します。」
私:「ところで、貴方がイメージしている高年収層と言うのは
年収いくらぐらいの人ですか?」
Aさん:「うーん、とりあえず1000万円以上ですかね?」
私:「Aさん、それは高年収層と言うよりも中年収層ですよ。」
Aさん:「そうですか?」
私:「だって、丸の内・大手町近辺に通勤している30代後半以上の人は
ほとんどAさんが言う高年収層になると思いますけど。」
Aさん:「なるほど。そうかもしれませんね。
しかし、とにかく高年収層を経験したいので
次のステップにつながる良い会社を紹介してください。」
私:「『次のステップ』って何ですか?」
Aさん:「だから、例えば年収3000万円以上の高年収求人を決められるような
ホンモノのエグゼクティブコンサルタントになる事ですよ。」
私:「いやー、1000万円とか3000万円とか
年収だけで付加価値が決まるわけじゃないですよ。
まー、わかりました。
とにかく、ホップ、ステップ、ジャンプできるような
『次のステップ』になる会社ですね?」
Aさん:「そうです。
とにかく宜しくお願い致します!!」
という訳で、何だか違和感を感じながら
年収1000万円以上の求人を扱えそうな3社様を
Aさんにご紹介しました。
その後、Aさんは、持ち前のコミュニケーション能力の高さで
2社から内定をGETされました。
私:「Aさん、調子よく2社から内定GETされましたね。
おめでとうございます!!」
Aさん:「でも・・・。武谷 (たけや)さん、実は迷ってます。」
私:「いいですよ。
大いに迷って決めてください。」
Aさん:「いやー、それがー・・・。
今の会社に残るという選択肢も出てきまして・・・。」
私:「ちょっと待って、ちょっと待ってAさん。
今の会社にそのままStayする?
何も前進しないじゃん?
『次のステップ』につながる転職をするんじゃなかったの?」
Aさん:「いやー、私も情にもろい所がありまして。
煮え切らなくて済みません。」
私:「わかりました。
迷うのであれば、今の会社に留まって頑張ってください。
その代わり、『次のステップ』は大変遠くなりますね。」
Aさん:「そうなんですよ。
だから迷っているんじゃないですか?」
私:「喝!!
それがわかっていながら迷う貴方に転職する価値はありません。
そんなズルズルベッタンな気持ちでは、転職しても業績が上がらないですよ。
ご迷惑ですから、2社とも辞退してください。」
Aさん:「ちょっと待って、ちょっと待って、武谷(たけや)さん。
最後に『本当にこれでいいのかな?』って
考えてみてるだけじゃないですか?」
私:「喝!!
Don’t waste your time !!
そんな事は初めに方針を決めてから転職活動してください。
貴方も現役の人材紹介コンサルタントでしょう?
面接していただき、内定を出していただいた企業に失礼ですよ。」
Aさん:「ごもっともですね。
それでは、X社とY社、どっちがいいと思いますか?」
私:「私じゃなくて、貴方はどっちなんですか?」
Aさん:「それぞれに良さがあって難しいですね。」
私:「どっちが、より『次のステップ』に近づけそうですか?
どっちが、より高年収層を扱っていますか?
どっちが、より実力が身に着きそうですか?」
Aさん:「いやー、自分次第で同じぐらいですかね?」
私:「では、奥さんは何と言ってますか?」
Aさん:「家内はX社の方がいいと言っています。」
私:「奥さんは、貴方よりコンサルタント適性が高いですね。
確かに、X社の方がエグゼクティブコンサルタントを輩出しています。
奥さんは、さすがですね。」
Aさん:「やっぱりそうですか?」
私:「貴方も本当はわかってるでしょう?
自分がより鍛えられるのはX社で
より居心地が良さそうなのはY社だって。」
Aさん:「お見通しですね。」
私:「当然です。
私、失敗しないので。」
という事で、結局AさんはX社に入社され大活躍された後
Z社に転職され、今や立派なエグゼクティブコンサルタントです。
「考えてばかりいると
日がくれちゃうよ」 みつを
合掌。