「転職すれば何とかなる。それって安易じゃない?」
先日、人材紹介コンサルタント未経験のAさんにお会いしました。
Aさんは若い頃、人材ビジネス会社で営業をしていたのですが
一念発起して、キャリアコンサルタント資格を取得しました。
今は、その資格を活かした仕事をしています。
私:「なぜ、また人材紹介業に戻りたいのですか?」
Aさん:「現在の仕事も長くなりまして
キャリアップのため転職もしました。
ただ、一生この仕事を続けていくのか?
と考えて悩んでいるんです。」
私:「どういう点で悩んでいるのですか?
資格もそう簡単に取れるものではないですが
折角ここまで今の仕事をやって来たじゃないですか?」
Aさん:「我々の仕事は、素晴らしい学歴を持ち優秀な人がたくさんいます。
英語も私とは比較ににならないネイティブクラスの人も多いんです。
現状では常にそんな環境の中での競争です。
どこまで行っても自分に限界がある気がするんです。
先が見えてしまうと言いますか・・・。」
私:「なるほど。
Aさんの仕事ではそういう面があるでしょうね。
何となくわかります。
でもよく考えてみてください。
Aさんが別の職業に転職をされたら
また新たな競争の中に入るんですよ。
しかも、今後はゼロからのリスタートです。」
Aさん:「そうですね。
それはわかってはいるのですが
やはり甘く考えていますかね?」
私:「正直申し上げてそう思います。
転職したら何かが変わるわけではないんです。
キャリアアップとは転職で達成できるものではなく
今の仕事を継続する方が到達しやすいんです。
ここまで積み重ねてきたものを失うのは
Aさんが考えている以上に大変な事です。
現在の仕事でも少し違う方向性で
今後のキャリア形成を考え直す事もできますよ。
ギブアップして全く違う仕事をしても
結局また同じ悩みにぶち当たるだけではないでしょうか?」
Aさんは
「現在の仕事に関して、再度しっかり考え直したい」
と言ってお帰りになりました。
長い年月、特定の仕事でキャリアを積まれた場合
将来を考えて悩み出す30代後半から40代の方が少なからずいます。
そこで、全く別の職種への転職を考え
それが叶えば、事態が好転するような錯覚に陥ってしまいます。
しかし、職業人生はそんな甘いものではありません。
積み重ねたものを捨てるという事は
今以上にもっと厳しい道を歩むという事です。
キャリアチェンジをしてはいけないとか
新しい事にチャレンジしてはいけない
という意味ではありません。
「そんな事をしたら、どういう事態になるのか?」
という事を冷静に予測して判断しなければならないと思います。
Aさんが、これまでの努力と経験を武器に
更に飛躍される事をお祈り致します。
「いちずに一本道
いちずに一ッ事」 みつを
合掌。