「文句なしの人材だが特筆するべき点もないから不合格？」

もう何年も前のお話ですが

ある外資系企業にＡさんと言う方をご紹介しました。

マネジャーのポジションでした。

書類選考は即合格となり、面接に進まれました。

Ａさんの面接後

私はその結果をお伺いするために

面接官だった人事責任者の方にお電話しました。

私：「本日はＡさんをご面接いただき、ありがとうございました。
　　　ご感想はいかがでしょうか？」

人事：「こちらこそ、ご紹介いただき、ありがとうございます。
　　　　Ａさんのご経歴は言う事ないですね。
　　　　人物面も真面目で良い方だと思いました。
　　　　悪い点が見つからないという印象です。」

私：「そうですか！！
　　　それでは前向きにお考えいただけますか？」

人事：「それが、実は正直迷っております。
　　　　悪い点は無いのです。
　　　　しかし、特筆して素晴らしいという点も感じられなかったんです。
　　　　何かこう、ピンと来るものが無かったんです。
　　　　贅沢を申し上げているのは重々承知しておりますが・・・。」

結局このお話は、Ａさんにも優先する他社があり、流れてしまいました。

しかし、「悪い点は無いが特筆するべき点も無い」

というフィードバックは、人材紹介コンサルタント泣かせですね。

感覚的にはわかる気もするのですが

ご本人にお伝えする時に大変困ります。

組織内のチームワークを大切にする日本企業では

協調性を重視する反面

個性の強い人を敬遠する企業が多いです。

求める能力が一定以上あれば

後は、職場での人間関係が円滑に治まる事を優先しているのです。

一方、個性の強い社員が多い外資系企業や

ベンチャー企業のアーリーステージ

ターンアラウンドのためのＢＰＲや組織改革など

協調性よりも、他の要件を必要とするケースもあります。

このようなケースの採用では

強いリーダーシップやカリスマ性がある人物

社内外に対するプレゼン能力に長けている人物

などを求める傾向があります。

所謂、「とんがった人」とも言えますね。

こういう人は、特定の組織や特定の場面では大きな力を発揮しますが

一方で諸刃の剣という面もあります。

先ほどのＡさんの名誉のために申し上げますと

Ａさんのご経歴は申し分なく

人物も真面目で温厚な実務家で

人事の方がおっしゃるように悪い点を探すのが難しい方です。

しかし、別の見方をすると

「大変エネルギッシュである」とか

「饒舌でコミュニケーション力が素晴らしい」とか

「野心家で人より高い目標を掲げて組織を引っ張る」とか

このような点からは、遠い所にいらっしゃる印象でした。

従って

ご紹介した企業とＡさんとではミスマッチだったわけです。

しかし、この辺の感覚は

実際に面接に進んでみないとわからない事も多いです。

例えば

「アグレッシブな人をお願いします」　というご要望があっても

どういう人をアグレッシブと判断するかは

企業や人によって違いがありますし

人材紹介コンサルタントにとっても判断が難しい所です。

それでも、幾人か面接をしていただく内に

人材コンサルタントも企業の判断基準がわかってきます。

これが、我々の仕事における面白さの一つだと思います。

最近では、個人の考え方や個性に着目して採用する企業が増えていると感じます。

「多様な個性が組織の柔軟性やアイディアの広がりに通じる」

と考えている企業が増えているのでしょう。

そんな意味でも

「人材紹介コンサルタント」の存在意義が益々高まっていると考えます。

つくづくアナログで人間的な仕事だな。

「にんげんだもの」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　みつを

合掌。