「退職者が少ない企業の悩み」
「ブラック企業」という言葉に対して
社員の離職率が低く定着率が高い会社を
「ホワイト企業」と言うそうですね。
離職率が低く辞める社員が少ないという事は
「良い会社」の一つの指標でもあります。
しかし数年前、ある「ホワイト企業」さんに新規訪問をした際
人事の方から、下記のようなお話を伺いました。
私:「御社はあまり中途採用をされていないと思うのですが
それでも人材紹介会社をお使いになる機会があるなら
是非、弊社もお取引させていただきたいと思って参りました。」
人事:「何年かに1度、お願いする事もありますよ。
その時は、是非お願いしたいと思うのですが・・・。
人事の本音としては、もっと中途採用したいんですよね。
でも、できないんですよね。
そっちの悩みの方が大きいです。」
私:「それはどういう事でしょうか?」
人事:「ご存じの通り、当社は居心地が良くて離職率が低いです。
ただ悪く言えば、甘くてぬるい環境なんですよ。
それでどういう状況かと言いますと
バブル期に新卒採用した40代後半の社員が大変多いんです。
年齢ピラミッドが明らかにおかしいです。
人件費の面から考えても悩ましいと考えています。」
私:「なるほど。
バブル期以降は採用数も減らしていらっしゃるから
その下の年齢層が少ないんですね?」
人事:「おっしゃる通りです。
だからと言って、赤字でもないのに簡単にリストラもできません。
人事評価制度を変えて厳しくする方法もありますが
極端に変えるとリスクも大きいんですよね。」
私:「確かにそうですね。
良くも悪くも社風が変わってしまうでしょうし
優秀な若い人材まで辞めてしまうかもしれませんね。」
人事:「そうなんですよ。
世間ではリテンションとか、退職者をいかに減らすかで
苦心されている人事の方も多いと聞きますが
当社はまさに正反対ですよ(笑)。」
確かに退職者が多過ぎるのは問題ですが
企業にとっては、「ある程度の人材流動=新陳代謝」があるというのは
組織の活性度を維持する上では重要な事です。
退職者があまりに少ないというのは
「居心地が良い」「厳しくない=甘い」環境であるという事が考えられます。
成果を出しても出さなくても、居続けられる環境があるという事ですね。
成果に厳しい企業であるほど
成果を出せない社員は、ふるい落とされてしまいます。
その分、退職者は増えますが
残った社員は優秀な人材の集団になります。
「当社は社員が定着しているから問題ない」と思っている内に
精鋭揃いの競合他社に追い抜かれて
いつの間にか業績が落ち込むという事はよくあります。
この辺のバランスが大変難しいところであり
経営マネジメントの肝かもしれません。
個別の企業には様々な事情や社風もあるので
一面だけを切り取って判断はできません。
しかし、この「人材の定着と新陳代謝のバランス」に関しては
我々、人材紹介コンサルタントにとっても
クライアント企業と接するに当って重要なテーマですね。
「張りすぎてもだめ
たるんでもだめ
ちょうどいいあんばいが
一番いい」 みつを
合掌。