「私は孤児でした」
以前、キャンディデートだった方で
転職後も懇意にさせていただいていた方から
元部下のAさんと言う方をご紹介いただきました。
「私の元部下だったAと言う若者がいまして
もしよろしければ、一度お会いいただけませんか?
今すぐ転職しないかもしれませんが
これまで私が会った中でも一番優秀な部下です。
ちょっと鼻息は荒いですが、いいヤツなんです。
動きの激しい外資系メーカーにいますから
近い将来転職を考える可能性もあると思います。」
Aさんは、当時28歳くらいの方でしたが
会った瞬間に
「ああこの人は素晴らしい人だな!!」
と感じたのを覚えています。
Aさんは地方の無名大学を卒業後
ある中堅メーカーに就職し
海外営業で実績を上げて
早々にリーダーに抜擢されました。
その後、同業界の外資系企業から
ヘッドハンティングされて転職しました。
私:「失礼ですが率直に申し上げます。
Aさんの大学から1社目の会社に就職するのは
難しかったでしょう?
まして、そこで出世するのは
もっと難しかったのではないですか?
相当努力されたんでしょうね。」
Aさん:「そうですね。
私なんかより
ずっと偏差値の高い大学出身の
優秀な社員がたくさんいましたからね。
私は大学時代は英文科で留学もして
少しばかり英語ができた事が
評価されたのかもしれません。」
私:「将来は、英語を使って仕事をしたい
と考えて留学されたんですか?」
Aさん:「漠然とそのような希望は持っていました。
大学では遊んでばかりのヤツも多くて
他の学生と馴染めない部分もありました。
私は、留学も大学の学費も全部自分で払ったんです。」
私:「え!!
全額ご自分で負担されたんですか?
それは凄いですね。
アルバイトでお金を貯めたんですか?」
Aさん:「はい。実は私は孤児だったんです。
里親に預けられて育ちました。
だから、育ての親に大学の費用を払ってもらうのは
申し訳ないと思ったんです。
でも、おかげで根性もついたし
自分で自分の道を切り開く力をつけられて
良かったと思っています。」
私はこの話をお聞きして
Aさんの凛としたオーラが
どこから来るのか
少しわかった気がしました。
全額自己負担で私立大学を卒業し
留学費用まで捻出したAさんの苦労は
並大抵ではなかったでしょう。
その苦労を乗り越えて来た自信と
自分の道を自分で切り開いて進んでいく姿が
お会いする人を魅了するのだと思います。
様々な生い立ちの方々とお会いすると
やはり、若い内に苦労をした人は強いなと感じます。
真ん中に強い芯を持っています。
人とのコミュニケーションにおいても
相手の感情の機微や
状況を読み取る事にも長けています。
「若い時の苦労は買ってでもせよ」
と言うのは、正にAさんのような人が見本ですね。
その後、Aさんとは10年以上お会いしていませんが
今でもどこかで
きっとご活躍されていると確信しています。
「わたしは
今日の一日を
大事に
生きたろうか」 みつを
合掌。