「自分の転職なのか?奥さんの転職なのか?(その2)」
昨日の続きです。
キャンディデート:「はい、そうなればそうだと思います。
しかし、それ以前に
私は人材コンサルタントに向いていると思いますか?」
私:「えー!!
『自分の天職にしたい』 と言ってましたよね?
今更、振り出しに戻りますか?」
キャンディデート:「それはそうですが
家内に絶対迷惑をかけないという確信が持てないと
転職できません。」
私:「絶対なんて保証は
どんな業界のどんな会社に転職しても無いですよ。
家庭を守れるだけの業績を上げて
年収を上げられるかは
全て貴方の能力と努力にかかっています。」
キャンディデート:「それはそうですが・・・・・。
とても大きな決断になりますので
正直迷ってしまいます。」
私:「奥様に転職のご相談をされるのは
とても大切だと思いますし
良い事だと思いますよ。
奥様にご理解いただく事も
成功されるためには必要ですよね。」
キャンディデート:「はい、そう思います。」
私:「はい。
ただ、今回の転職は誰の転職でしょうか?
転職するのは貴方ですよね?
奥様の転職ではない。
奥様には、もう十分相談してきたじゃないですか?」
キャンディデート:「はい、もちろんそうですが。」
私:「わかりました。
貴方の人生の最終意思決定者は奥様という事ですね?
貴方には自分の人生の決裁権が無い事がわかりました。
ご自分の人生なのに
奥様が貴方の仕事を決めるわけですね?」
キャンディデート:「いや、家庭生活がありますから
自分の一存では決められません。」
私:「承知致しました。
確かに最近はそういうご家庭も多いでしょう。
ただね、『人の人生の岐路に関われる仕事をしたい。』 とおっしゃる貴方が
自分の進路も自分で決められないとなると
他人の転職に関してアドバイスなどできますか?
そもそも人生とは意思決定の連続じゃないですか?
進学・就職・転職・結婚・子育て・住宅購入・親の介護など
次から次に重要な意思決定が必要になります。」
キャンディデート:「そうですね。」
私:「私は進学も就職も転職も独立も
誰にも相談した事が無いんですよ。
もちろん、親にも家内にもですよ。
全て私の判断に任せて
良くも悪くも私の人生は私次第だと任せてくれています。
だって、人生なんて自分で決めて
自分で切り開くしかないですもん。
その結果は全て自分の責任です。
どんな仕事をしても
ちゃんと稼いで家族に不自由な思いはさせないというのが
男じゃないんですか?
基本的にそういう考え方を持っている人が
この人材コンサルタントに向いていると思います。
その意味では
自分の転職を自分で決められない貴方は
ご自分でもおっしゃるように
人材コンサルタントには不向きかもしれません。」
キャンディデート:「そうかもしれませんね。」
私:「わかりました。
もういいじゃないですか?
今回の内定は辞退しましょう。
私が責任を持って
辞退される事をお勧めします。
入社前の段階でそこまで迷われる方々の場合は
無理に転職されても
短期間で離職される事が多いですから
クライアントにも貴方にも良い結果に
はならないと思います。
また、貴方の上司になる予定の方は
大変決断力のある方で
部下にも即断即決を求める方です。
そんな上司とはうまくやっていけないでしょう?
本当に無理に転職する必要はありません。
今回は奥様のご意見に従って
辞退されてください。」
このような経緯で
貴重な成約案件を内定辞退にしてしまいました。
クライアントにも陳謝しなければいけません。
採用責任者:「え!!
辞退ですか?
最高の条件を提示したつもりですが
一体何が?」
私:「採用されても御社のためにならないと判断しましたので
辞退していただきました。
勝手な事をして
誠に申し訳ございません。」
採用責任者:「そうですか?
実は私もオファー面談をさせていただいた時
『この方をこの条件で採用してもいいのかな?』
と正直疑問を持っておりました。
ご自分の意思が弱い方だと感じました。」
私:「申し訳ございません。
今回は私がご本人にお化粧をさせ過ぎました。
二次面接の評価がボーダーラインでしたので
最終面接の前に面接対策をやりすぎました。
その結果、最終面接の評価が高くなりすぎて
分不相応な高い年収提示をしていただきました。」
採用責任者:「承知致しました。
役員には私から報告します。」
私:「大変申し訳ございません。
折角ご採用いただいても
『期待はずれだった』 という結果になる事だけは避けたいものですから。」
採用責任者:「はい、私も同感です。」
色々な人がいて
色々な人生
色々な価値観があります。
「だからこそ世の中はおもしろい」 と思えなければ
人材コンサルタントなどやってはいけないのでしょう。
最後は個人の自由ですから
私が決められる事ではありませんし
決めるべきでもない。
私が言った通りにした結果
その方が不幸になったら
責任取れませんしね。
生き方が違うだけです。
でも、今回は辞退していただいて
本当に良かったと思います。
失礼な事を言って
申し訳ございませんでした。
ご自分らしい人生を歩んでください。
ありがとうございました。
「その船を漕いでゆけ
おまえの手で漕いでゆけ
おまえが消えて喜ぶ者に
おまえのオールを任せるな」 中島みゆき
合掌。