「ノルマは毎月100人のエグゼクティブに会うこと」
リーマンショック後
あるエグゼクティブ・サーチファームでコンサルタントをされていたAさんが
相談にお越しになりました。
私:「立派なご経歴ですね。
年間7000万円以上売っていたんですね?」
Aさん:「いや、大した業績ではありません。
1億円売れなかったから
クビになったんですよ。」
私:「1億円売れないとクビ?
さすが厳しい世界ですね。」
Aさん:「今も残っているコンンサルタントは
1億円以上売れる精鋭です。」
私:「しかし、7000万円も売れたら十分黒字でしょう?
Aさんの年収はいくらだったんですか?」
Aさん:「700万円ぐらいです。」
私:「えー!!
7000万円売って年収はたったの700万円!!
それって完全に搾取されてますよね?」
Aさん:「他のコンサルタントも売上の割には
そんなに高い年収ではないので
仕方ないですよ。」
私:「しかし、Aさんをクビにしなくてもいいじゃないですか?」
Aさん:「私自身も仕事が厳しくて耐えられなくて
逃げたかった面もあったので仕方ないですよ。」
私:「ところで、アソシエイトからコンサルタントになるには
どうすればいいのですか?」
Aさん:「毎月100人のエグゼクティブに会う事です。
『100アポ』って言うんですよ。」
私:「月100人のエグゼクティブに会う?
それは大変ですね。」
Aさん:「はい、大変でした。
お忙しい人たちなので
土日も無かったです。」
私:「それはそうなってしまいますよね。
ところで、実際に100人も会えるものですか?」
Aさん:「いいえ、70~80人が限界でした。」
私:「それでも凄いですよ。」
Aさん:「はい。
ですから、史上最短でコンサルタントになれました。」
私:「立派ですね。
ところで、その 『100アポ』 には、どんな意味があるんですか?
当然、人材のデータベースを作るという目的はわかりますが
他にはどんな目的があるんですか?」
Aさん:「はい。
人を見る目を養うという事です。」
私:「確かにそれだけ多くのエグゼクティブに会う事ができたら
人を見る目が養われるでしょうね?」
Aさん:「はい。
最初の頃は緊張しましたが
毎日エグゼクティブに会っていると慣れてくるんです。
そうすると、『この人はさすがに大した人物だな。ホンモノだな。』 とか
『この人は肩書だけは立派だけど、大した人物じゃないな。』 とか
何となくわかって来るんです。」
私:「なんとなくわかります。
他にはどんな収穫が?」
Aさん:「はい。
相手にもよりますが
どんな内容の話をすれば覚えてもらえるか?
信頼してもらえるか?
そんな事もわかって来ます。」
私:「そうでしょうね。
次元の低い話をしたら
二度と会ってくれないでしょうね?」
Aさん:「はい。
ですから、こちらも勉強が必要です。」
私:「そうでしょうね。
成長できそうですね?」
Aさん:「はい。
その点に関しては良かったと思いますし
大変感謝しています。」
私:「大変濃密な時間を過ごされたわけですね。
それでまたその世界に戻りたいと?」
Aさん:「はい。
非常に厳しい世界ですが
再度チャレンジしたいと思っています。」
私:「承知致しました。」
その後、私からも何社かご紹介したのですが
前のエグゼクティブ・サーチファームから
「戻って来い」
と声を掛けられて
Aさんはその会社に戻られました。
Aさん:「有難い事に戻って来いと言われました。
厳しい会社ですが
中途半端では終われないと思いまして
再度お世話になる事にしました。
色々とありがとうございました。」
Aさん、お元気でご活躍の事と思いますが
お体とご家族を大切に。
「生きているうち
はたらけるうち
日のくれぬうち」 みつを
合掌。