「トップコンサルタントの暗黙知を形式知化すれば業績は上がる」
以前訪問したクライアントの社長さんが悩んでいました。
社長さん:「どうしても人材紹介コンサルタント(キャリアコンサルタント)の
個人差が大きくて困っているんですよね。」
私:「そうですよね。
どこの人材紹介会社も同じ悩みを抱えていますね。」
社長さん:「年間5000万円売れる人もいれば、わずか1000万円の人もいます。
1000万円の人の方が多いので利益が出ません。」
私:「1000万円の人でも辞めさせないで
雇用し続けていらっしゃるというのは
社長さんは我慢強いですね。」
社長さん:「そうですね。
創業以来リストラしない主義ですから。
しかし、それが良いのか悪いのか?」
私:「多くの人材紹介会社では1000万円しか売れない人はいられなくなります。」
社長さん:「そうですよね。
私も何とかならないかと思って
あの手この手で刺激を与えているつもりなんですが
長年この社風に馴染んできた人ばかりですから
なかなか変わらなくて。」
私:「安易に人を辞めさせない会社は今時珍しいですし
個人的には尊敬します。
ただ、業績低迷が続くと社内の雰囲気も沈滞しますし
益々抜け道が見つからなくなりますから
どこかで厳しい決断も必要かもしれませんね。」
社長さん:「そうかもしれません。
給与制度なども実力主義の体系に変えたり
コンサルタントによっては得意な事だけやらせたり
様々な試行錯誤はしているのですが。」
私:「迷宮にはまりますよね。
私もマネジメントがうまく行かない時は同じでした。
試行錯誤しても効果が出ないですよね?」
社長さん:「そうなんですよ!!
どうしたらいいと思いますか?」
私:「私も独立して一人になり
プレイヤーに戻って実感したことがあります。」
社長さん:「なんですか?」
私:「無駄な事をやらない事が大切だと思います。」
社長さん:「色々やっては駄目ですか?」
私:「そうですね。
やる事を増やすと、やらないでもいい事も増やしてしまいますし
本当に集中してやるべき事にパワーを割けなくなりますよね?
そうなると業績は確実に低迷します。」
社長さん:「なるほど。」
私:「さっさと
やらない事を先に決めて、
やるべき事だけにコンサルタントを集中させる事が大切だと感じています。」
社長さん:「実際にはどうしたらいいんですか?」
私:「トップコンサルタントの暗黙知を形式知にする事です。」
社長さん:「うん? 具体的には?」
私:「個性や能力の違いもあるので
トップコンサルタントの完全なコピーはつくれません。
でも、やり方によっては、トップコンサルタントの判断軸を形式知にできます。」
社長さん:「具体的には?」
私:「トップコンサルタントは直観的に求人を三つぐらいに分けています。
①絶対に決めたい求人
②できれば決めたい求人
③決まらない求人
のような感じです。
求人を獲得した時から既に
やるべき事とやらない事を仕分けしているでしょう?」
社長さん:「なるほど。」
私:「三段階に分けられるのに
全ての顧客に対して平坦に同じパワーを使ってしまっては
業績が上がるわけがありません。
限られた労働時間の中で生産性を上げるには
残念ながらサービスに濃淡をつけるしかありません。」
社長さん:「理屈はわかりましたが
具体的にどうすればいいですか?」
私:「トップコンサルタントの方に
他のコンサルタントの求人に関しても仕分けをしてもらってください。
そして、優先的に注力する求人を絞り込んでください。
毎朝、求人仕分けミーティングを繰り返しやれば
トップコンサルタントの暗黙知が形式知化されます。
一人のコンサルタントが注力する求人を10~20件に絞らせて
優先順位が変われば随時注力求人の入れ替えをしてください。」
社長さん:「なるほど。
あまり考えてなかったです。」
私:「全コンサルタントの前で
トップコンサルタントの方に仕分けをやっていただく事によって
ご本人の売上は少し落ちるかもしれませんが
他のコンサルタントの売上が平均500万円上がれば
会社の利益は大きくなります。」
社長さん:「なるほど。
うまく行けばそうなりますね。」
私:「御社はコンサルタント同士の仲が良い会社ですから
そういう試みも可能ではないでしょうか?
絵に描いた餅かもしれませんが
スキルの高いコンサルタントの判断軸や
優先順位の付け方=時間の使い方 を共有する事は
他のコンサルタントの底上げにつながると思います。」
社長さん:「確かに、大手人材紹介会社でもノウハウ共有を盛んにやっているようですね。」
私:「はい、そうなんです。
中小エージェントも力を入れないといけませんね。」
もちろん
③決まらない求人に対しては
「なぜ決まらないのか?」 「どうしたら決まるようになるのか?」
という説明や提案を
クライアントにはっきり伝えるのも我々の責務だと思います。
リアルな市場の需給バランスに関しては、クライアントにしっかり伝えなければいけません。
厳しいですが、民間企業として経営を存続させるためには
きれい事だけ言ってられないのも現実です。
「やれなかった
やらなかった
どっちかな」 みつを
合掌。