「忘れられない成約」

人材紹介コンサルタント（キャリアコンサルタント）の皆さんは

これまで企業と人材のマッチングを数多く経験する中で

心に残る忘れられない成約の思い出があると思います。

年収数千万円のエグゼクティブサーチに成功したとか

極秘のプロジェクトや技術を扱う人材の転職に立ち会ったとか

そんな華々しい成功体験をお持ちの方も多いかもしれません。

でも意外に、ごく地味な中小企業と

ごく普通のキャンディデートとの出会いにこそ

心に残るエピソードがあると私は思います。

旧帝大の大学院を出たＡさんと

地方のある小さな零細企業とのマッチングも

そんな事例の一つでした。

Ａさんは理工系の学部・大学院の博士課程を経て

学歴は申し分ない人でした。

朴訥とした素直な好青年です。

人とのコミュニケーションは得意ではなく

卒業後はポスドクで

わずか１年契約の仕事をしただけで

職歴と言えるほどの経験もない第二新卒でした。

博士課程までの専攻も汎用性に乏しく転職活動には苦労をしました。

１０社以上応募しましたが、どこにも合格できず

最終的に内定をいただいたのは片田舎にある部品メーカーでした。

Ａさんは高学歴だからと言って

傲慢になることも高望みすることもなく

その零細企業のオファーを喜んで受諾しました。

従業員は数十人で三次受けの汎用部品を作っている零細企業です。

Ａさんの人柄と素養の良さを評価していただき

遠方から転職してくるＡさんのために寮も用意してくださいました。

寮と言っても田舎町ですからワンルームマンションなどではなく

会社が若い社員のために一軒家を借り

数人が共同生活をしていました。

入社の前日、その企業の人事の方からお電話をいただきました。

「先ほど、Ａさんが住むお部屋を掃除してきました。
　古い民家なのでＡさんが気に入ってくれるかわかりませんが
　せめて綺麗に掃除して迎えてあげたいと思いまして。
　もうすぐ駅に到着するようですね。
　駅から遠いですし荷物もあると思いますので
　私の車で迎えに行ってきます。」

Ａさんの年収は３００万円ぐらいだったと思います。

若く経験もない人材ですが

これだけ温かく歓迎してくださる会社はなかなかないと思い感激しました。

お金や条件ではない人の温かさを

心から感じられ忘れられない成約になりました。

人材紹介コンサルタントの仕事は

企業と人との唯一無二の出会いに立ち会う

素晴らしい仕事だと思います。

その一つ一つが人生のドラマですね。

その事を忘れずに日々精進したいと思います。

「生きていて
　よかった
　生かされてきて
　よかった
　あなたに
　めぐり
　逢えたから」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　みつを

合掌。