「与えられた環境でいかにベストを尽くすか?」
ある人材紹介コンサルタント(キャリアコンサルタント)Bさんから
お父様のお話を伺いました。
Bさんのお父様はもう70代で定年退職されています。
Bさんが実家に帰り、現在の就職事情などの話になった時
「今の若い人たちはたくさんの情報があって選択肢があっていいよね。
恵まれていると思うよ」とお父様はおっしゃったそうです。
Bさんのお父様は高校卒業後ある大企業に入社し40年勤めあげました。
高校3年生の時
家が貧しかったため就職か進学かを非常に悩んでいたそうです。
奨学金をとって進学するか?就職するか?
ぎりぎりまで悩んでいるうちに
周りの就職組はどんどん就職先を決めていき
最後に就職すると決断した時には
もう学校に張り出してある採用中の企業は2社しかなかったそうです。
どちらの企業に対しても
特にやりたいとか興味があったわけでもありませんでしたが
選択肢がそれだけしかなかったのでその内の1社を受けました。
当時もちろんインターネットもなく
学生の就職活動情報は主に学校を通じてでした。
応募した会社は日本を代表する大手企業でした。
採用試験の地方会場に行くと
そこでは130名ほどの応募者がいて
聞けばその中でおそらく採用されるのは6、7人と聞き
到底難しいだろうと思ったそうです。
しかしながらBさんのお父様は
進学か就職か迷っていたこともあり勉強をしていた事
とりわけ英語の成績が高校在籍時からトップクラスだった事もあり
筆記試験が2番目の成績で無事内定をいただいたそうです。
そんなBさんのお父様ですが
大学卒の先輩や同僚が多くいるその企業で
入社後も大変苦労したとおっしゃっていました。
その企業では職務上英語でのコミュニケーションが当り前にあり
大学でESSや留学を経験した社員がたくさんいる中
高校では成績トップだったBさんのお父様でも
実際の会話は流暢に話せるわけでもなく困ったそうです。
かといって当時英語の話し方を丁寧に教えてくれる先輩など誰もおらず
「できて当たり前」の環境で仕事をしなければなりませんでした。
Bさんのお父様は自ら英語を教えてくれる外国人を探し
個人レッスンを申し込みました。
そうして仕事の休みには毎週その外国人のもとへ通ったそうです。
会社では、その事は誰にも言いませんでした。
Bさんのお父様は
「今のようにどこがいいとか悪いとか
何がやりたいとか
自由に選べる状況でも時代でもなかった。
でも、ご縁があったその場所で
とにかく自分で考えて頑張るしかなかった。
40年間やってきた仕事が好きだったか?
会社が好きだったか?と聞かれるとわからないが
そこで頑張るしかないとやってきて
色んな出会いがあり色んな学びがあった。
それは幸せなことだったと思う」
とおっしゃっていたそうです。
選択肢がたくさんあり
自分のやりたい事が何かを考える機会があるというのは良い事だと思います。
しかし、Bさんのお父様の言葉にも考えさせられるものがあります。
「与えられた環境でいかに頑張るか?」
情報や選択肢にあふれた現代でも
忘れてはいけない事だと感じました。
「生きているうち
はたらけるうち
日のくれぬうち」 みつを
合掌。