「昔の人材紹介業も楽じゃなかったよ」
「いつも楽しく拝見しております。
業界関係者ですが、新参者です。
武谷さんがブログのはじめのころ書かれていたような
人材紹介業の黎明期のお話がもっと読みたいです。
お時間のあるときにぜひお願いいたします。」
以前のブログに対するコメントで上記のようなリクエストをいただきましたので
それにお応えして昔話を書かせていただきます。
何分旧い話で恐縮です。
昔の人材紹介の営業は楽だった?
30年前は、この業界の営業はある部分では楽でした。
もちろん、注文を取るだけなら、という条件付です。
当時は 「人材紹介って何?」 という時代で
それだけで珍しがられたわけですから
TELアポが上手なら3件に1件は取れました。
それも相手は社長、最低でも人事課長(相手が大手企業の場合など)に会えていました。
リテイナー(前金780万円)契約だったので
決裁権のある人、最終的には中小企業なら社長
大手企業でも役員以上でなければ話にならなかったわけです。
毎日のように新規企業の社長や役員に会っていましたから
時々課長や人事担当者に話を回されるとモチベーションが下がりました。
今思えば、若造のくせに偉そうでした。
でも、偉そうでなければ売れなかったのも事実です。
新規企業の社長に会って
オドオドびびっていたら、とても前金受注などできません。
当時の鬼マネージャーから
「武谷(たけや)、もっとふんぞりかえってゆっくり偉そうに話せ。そうしないと売れないぜ!!」
「武谷(たけや)、相手が話したら深くうなずいて『なるほどー』 と相槌を打って間を取れ。」
「武谷(たけや)、一旦断られても『でも社長、ここは勝負して良い人材を採用しましょう』
と何度もクロージングしろ。
社長という人種はお金を使いたくて仕方がないんだ。」
「武谷(たけや)、俺がお前に話を振るから、最近のピカピカの登録者の略歴を話して
うちには凄い人材が登録されている雰囲気をかもし出せ!!」
毎日こんなことを言われていました。
要するに、若造のクセに世の中知ってる風な雰囲気をかもし出さないと売れないわけです。
当時、 「かもせ」 とか 「かもし」 とかいう言葉が社内で流行っていました。
このようなヤクザな商売というか、つまらない小芝居が通用した時代でした。
問題は高額なリテイナー(前金)契約を取れる会社は決まりにくい求人が多いという事でした。
会社はまともだがキャンディデートが少ないとか
会社そのものがどうなんだろう?というものです。
本来、決める自信がない求人をリテイナー(前金)で受注してはいけません。
ただ当時のリクルートには
「完全成功報酬タイプ」の商品は無かったので
自分や所属グループ、会社の目標達成のために
リテイナー(前金契約)を獲りまくったのです。
「天網恢恢疎にして漏らさず」
やはり、天誅が下りました。
バブル崩壊でリテイナー契約は獲れなくなるばかりか
既に受注済みのクライアントからも
「金返せ!!」のクレームが多発。
会社も3期連続赤字の火の車で従業員数も三分の一に。
結局、この挫折を機に本気でお客様の事を考えるようになったのです。
そこから改革が始まり売上が元に戻ったのは7年後です。
リテイナー契約が悪いというのではなく
決められる求人案件を選別すれば良かったのです。
当時は受注審査機能、マーケティング機能、需給調整機能
そのようなのもがありませんでした。
ただ、一人一人の営業マンが死に物狂いでリテイナー契約を獲ってきてしまったので
お客様に大変なご迷惑をおかけしてしまったのです。
そんな悪人の筆頭が私でした。
誠に申し訳ございませんでした。
「ひとりごと
ふだんどんなに
カッコいいこと
言っていてもなあ
人間てやつは
いざとなると弱くて
だらしのねえもんだな
ひとごとじゃねえ
おれの話だ」 みつを
合掌。