「一発屋は連れてくるな!!」
昔のリクルートには
恐ろしく営業力のある先輩がたくさんおりました。
その中でも 「レジェンド営業マン列伝」 に名を連ねるA先輩がいます。
A先輩はリクルートで営業マネージャーをやっていたのですが
経営方針に不満もあり
当時のリクルート人材センターに異動してきたのです。
A先輩:「何でも利益・利益じゃ営業の幅が狭くなっておもしろくねえよな。」
私:「リクルートはそんな感じですか?」
A先輩:「昔はお客さんありきで何でも提案できたのに
最近は利益率の高いリクルートブック以外は売るなとさ。」
私:「そりゃ提案の幅も狭くなるし、お客さんも不満でしょう?」
A先輩:「お客さんも不満だし、現場の営業マンも仕事がおもしろくなくなるよ。
利益重視のご立派な経営方針はわかるよ。
でも、俺はそんなに大人じゃねーからさ。」
こんな感じでした。
ところで、当時のリクルート人材センター(現:リクルートキャリア)は
クライアントから前金も成功報酬も両方いただくという
「ぼったくりエージェント」 でした。
そこに来たA先輩は真面目で純粋な人なので
「前金をもらったクライアントには100%決まる」
と思い込んで営業を始めたのです。
従って、持ち前のレジェンド営業力を発揮して
新規クライアントから前金受注しまくりました。
営業マンはアポイントさえ取って
A先輩を連れて行って営業してもらえば
どんどん業績が上がるのです。
A先輩:「社長、前金の780万円ぐらい出せるだろう?
やろうよ。」
社長:「そんな簡単に言うけど高いよ。」
A先輩:「社長、リクルートの住宅情報には3000万円も使ってるじゃん。
うちにも780万円ぐらい使ってよ。
とびきりの人材を紹介するからさ。
採用したいでしょ?」
社長:「もー、仕方ないな。
わかったよ。やるよ、やるよ。」
ド迫力で社長もタジタジです。
こんな感じでバンバン前金受注してしまうわけです。
その後、営業マンが一人でクライアントに訪問すると
社長:「おい、この前の課長だか部長だか知らないけど
あの一発屋は二度と連れてくるな!!
あいつのおかげで予定外の金を払うことになったよ。
参ったよ。」
お客さんに 「NO」 と言わせない営業力があったわけですね。
しかし、間もなくA先輩は気づきました。
A先輩:「前金もらう以上は100%決まると思ったら
大して決まらないじゃねーか!!
これじゃ、お客さんに迷惑かけちゃうよ。
俺はもうこんな商品売らねーよ。」
そして、前金の営業マネージャーはやめて
キャリアアドバイザーに異動して来ました。
A先輩:「こっちは登録者から金をもらうわけじゃねーし
誠心誠意アドバイスすれば
少しは世の中のためにもなるだろう。」
実際にA先輩は登録者の面倒見が良いばかりか
キャリアアドバイザーとしての業績もダントツでした。
しかし、ある日、
A先輩:「この商売やるなら
お客さんから前金取っちゃ駄目だよ。
俺は成功報酬型でやりたいから独立するよ。
じゃあな。」
とおっしゃって辞めて独立開業されました。
独立以来25年ぐらいですが
今も現役でやられています。
クライアントやキャンディデートとのリレーションも長期的で良好、信頼されています。
私が独立した時にも
律儀に菓子折りを持って来てくださいました。
目標とするには偉大すぎるA先輩の話でした。
「アノネ
なるべくなら
うそはないほうが
いいんだなあ
オレそんなこと
いう資格は
ねえけどね」 みつを
合掌。