「小手先の面接対策は意味が無い」
先週に続き面接対策の話です。
現役人材紹介コンサルタント(キャリアコンサルタント)のAさんの面接対策での話です。
Aさんとの初回面談の際にこんな会話がありました。
私:「Aさんは実績も根性もありますから
合格する可能性がある会社は複数あります。」
Aさん:「そうですかね?
私を採用していただける人材紹介会社なんか
あまりないと思っています。」
私:「え? どうしてですか?」
Aさん:「だって私なんかとてもとても。
身の丈に合った会社でいいんです。
そういう会社があればご紹介ください。」
私:「そんなに謙虚になる必要はありませんよ。
自信を持って応募しましょう。
まずは、この3社はいかがでしょうか?」
Aさん:「えー、そんな立派な会社はとてもとても。
応募させていただくのも失礼になると思います。
武谷(たけや)さんにご迷惑がかかりますから
申し訳ないです。」
私:「何を言ってるんですか?
可能性が無ければご紹介しませんよ。
とにかくちゃんと検討してみてください。」
Aさん:「わかりました。
そこまでお薦めいただけるのでしたら検討してみます。」
こんな感じでお帰りになりました。
しかし、その後しばらく返事がありませんでしたので
「その後、お元気ですか? ご検討いただけましたか?」
というメールをお送りしました。
Aさん:「返事が遅くなって大変申し訳ございません。
クイックレスポンスを信条としている
人材紹介コンサルタント(キャリアコンサルタント)として恥ずかしいです。
そこまで押していただけるのであれば応募させていただきます。」
私:「わかりました。
すぐに推薦させていただきます。」
という事でご紹介したところ
すぐに3社から面接したいとの返事がありました。
そして、その内の1社の面接日時が決まりましたので
面接対策の時間を設けさせていただきました。
ここからは電話での会話です。
私:「それでは面接対策シートに沿って始めます。
宜しくお願い致します。」
Aさん:「事前に色々考えたり調べたりしたんですが
自分の事となると難しいですね。
何が何だかわからなくなってきました。」
私:「混乱させて済みません。
実際の面接はAさんが想像しているよりもシンプルなものですから
安心してください。」
Aさん:「本当ですか?
質問に対する回答は何が正解なのか難しいですね。」
私:「正解なんてありませんよ。
言ってはいけない事はありますよ。
でも面接に正解なんてないんです。」
Aさん:「正解がないとはどういう事でしょうか?」
私:「面接ではいかにAさんらしい回答をするかです。
Aさんらしい回答、Aさんの強みを活かした回答をすればいいんです。」
Aさん:「素の私らしい回答で大丈夫なんですか?」
私:「はい、それが一番です。
だから正解なんてありません。」
Aさん:「えー、そんな事言われると益々混乱します。」
私:「そうですか?
それでは、Aさんの強みは何ですか?」
Aさん:「どんな苦しい時でもコツコツ頑張れる事ですかね?
あとは自分より仲間のために頑張れる協調性ですかね?」
私:「ほー、それだけでも凄いじゃないですか!!」
Aさん:「そうですか?」
私:「少なくとも私は自分より仲間のためになんか頑張れませんよ。
そんな事はできません。
Aさんは本当にできるんですか?」
Aさん:「はい。
自分の目標よりチームの目標を達成する事にやりがいを感じますし
そういう時の方が自分の業績も他のメンバーの業績もいいです。」
私:「過去にそういう事例があったんですか?」
私:「はい。
私の目標は一応ありましたが
チーム目標の方が重視された事がありました。
その時が自分もチームも一番業績が良かったです。
すごく楽しくて充実していました。」
私:「偉いですね。
その成功体験を面接で話せば合格しますよ。」
Aさん:「そんな話で合格できるんですか?」
私:「だって、自分とチームの業績を同時に最大にできた実績があるんでしょう?
それこそがAさんの強みじゃないですか?
自信持ってくださいよ。」
Aさん:「ありがとうございます。」
私:「ところでAさん、周囲の人から謙虚すぎるって言われませんか?」
Aさん:「え!!
実はよく言われるんです。」
私:「Aさん、謙虚なのは立派です。
それはAさんの素晴らしい人柄を象徴する立派な強みです。
しかし、その裏側にAさんの弱みがあります。
時々謙虚すぎて弱気に見える事です。」
Aさん:「それもよーく言われるんです。」
私:「だから謙虚になりすぎないで自信を持ってくださいよ。
みんながAさんの良さを認めていますから。」
Aさん:「あーそうですね。
そう言われたら少し気が楽になりました。」
私:「はい、是非いつものAさんで面接に臨んでください。
そのままぶつかってください。
私が今日伝えたかったのはそれだけです。」
Aさん:「ありがとうございます。
そうですね。
自然体でぶつかって駄目でも仕方ないですし
難しく考えすぎてました。
元気が出てきました。」
面接対策の目的は小手先のテクニックを教える事ではありません。
自分の頭と心を整理していただき
自分の事を再認識していただき
自分らしく面接に臨んでいただくためのものです。
「自分が自分にならないで
だれが自分になる」 みつを
合掌。