「面接では概念ばかり語るな」
昨年、人材紹介コンサルタント(キャリアコンサルタント)のAさんが相談にお越しになりました。
優秀な方なので
本番前の面接対策は必要ないと思ったのですが
万全の体勢で臨むために一応実施しました。
(模擬面接概略)
私:「立派な会社で働かれていたのに
なぜ、人材紹介コンサルタント(キャリアコンサルタント)の道を選んだのですか?」
Aさん:「企業と人材の成長・発展に貢献したかったからです。」
私:「それは具体的にどういう事ですか?」
Aさん:「はい。
企業に良い人材をご紹介して成長・発展に貢献したいという思いと
人材に良い企業をご紹介して成長・発展に貢献したいという思いがあるからです。」
私:「もう少し具体的に話していただけますか?」
Aさん:「はい。
企業の成長・発展のためには良い人材が必要ですし
人材の成長・発展のためには良い企業で職務経験を積む必要があります。」
私:「もう少し具体的に各論を話していただけますか?」
Aさん:「各論ですか・・・・・。」
私:「はい、各論と申しますか
過去の成功事例や失敗事例など象徴的なエピソードはありませんか?」
Aさん:「事例、エピソードですか?」
私:「はい、そうです。
何かのきっかけがあったから
Aさんは人材紹介コンサルタント(キャリアコンサルタント)になったんですよね?」
Aさん:「きっかけですか?」
私:「はい、きっかけになった具体的な事象です。」
Aさん:「なるほど、確かにきっかけになった事がありました。」
私:「はい、どんな事がありましたか?」
Aさん:「最初の職場の同僚だったB君が大変悩んでいました。」
私:「どのような事で悩んでいたのですか?」
Aさん:「B君は当時の仕事に自分が向いていないと感じて悩んでいました。」
私:「なるほど、それでBさんはどうされましたか?」
Aさん:「私も何度かB君の相談に乗ったのですが
どうしていいかわからず
的確なアドバイスができませんでした。」
私:「なるほど、なかなか難しい相談ですよね。
その後、Bさんはどうされましたか?」
Aさん:「人材紹介会社に登録してコンサルタントに相談したんです。」
私:「ほー、ついにBさんは登録したんですね?」
Aさん:「はい。
登録してコンサルタントに相談した結果
将来の方向が決まったようでした。」
私:「良かったですね。その後は?」
Aさん:「はい。
何社か求人を紹介された中で良い仕事が見つかって
その会社に転職しました。」
私:「なるほど、Bさんは転職してどうなりましたか?」
Aさん:「はい。
B君が転職してから半年後に会ったんですが
以前とは別人のように元気になっていました。
転職直後は環境変化が大きくて大変だったそうですが
今はそれにも慣れて仕事が充実していて楽しいと言っていました。
社長さんや上司との距離も近くて会社の方向性もよくわかり
風通しがいいそうです。
社長さんや上司からもB君が入社してくれて助かったと
評価されているようでした。」
私:「それは良かったですね。
そこでAさんはどう思いましたか?」
Aさん:「悩んでいたB君があんなに元気になって良かったと思いましたし
転職先の会社もB君が入社した事によって助かっているので
双方にとって良かったと思いました。
そして、B君を紹介した人材紹介会社のコンサルタントは立派だと思いましたし
自分もそんな仕事ができたらいいなと思いました。」
私:「なるほど、Aさん、やっと具体的な話をされましたね。」
Aさん:「そうですね。
時間がかかってしまって申し訳ございません。」
私:「やっぱり模擬面接をやって良かったです。
もちろん理念とか概念も仕事に取り組むスタンスとして大切です。
ただ、具体的な回答が少なくて概念的な回答が多すぎると
この人には実務的な能力はあるのかな?という疑問を抱かれます。」
Aさん:「そうですね。
概念的な話ばかりでは面接官も理解しにくいでしょうし
話が前に進んで行きませんね。」
私:「そうなんです。
学生であればある程度概念的であっても仕方ないかもしれませんが
社会人ですしコンサルタント実務経験者ですからね。」
Aさん:「そうですね。
わかりやすい事例を交えながら質問に回答するようにします。」
私:「はい、必要に応じてそうしてください。
ただし、事例はあくまで簡潔にまとめて話してください。
『話が長い、回りくどい』 という不合格理由が大変多いですから。」
Aさん:「わかりました。
必要に応じて簡潔な事例を準備して面接に臨みます。」
面接後、Aさんから連絡がありました。
Aさん:「おかげさまで面接の最後に内定ですと言われました。
模擬面接が大変役に立ちました。
本当にありがとうございました。」
私:「いいえ、内定されたのはAさんの実力です。
指摘されてすぐに修正できるのは素晴らしい能力です。
この度は誠におめでとうございました。」
「花を支える枝
枝を支える幹
幹を支える根
根はみえねんだなあ」 みつを
合掌。