「転職に対する罪悪感」
私が営業を経験した後、キャリアアドバイザー(キャリアコンサルタント)として
デビューした24年前は、世相的に 「転職に対する罪悪感」 があった。
第二新卒の若者が転職するなど、とんでもない話だった。
まさに、 「石の上にも三年」 は頑張りなさいだった。
人材紹介会社の敷居も高く、気軽に相談に来るような人はあまりいなかった。
登録するには勇気が必要だったと思う。
キャリア的にも20代で複数の転職歴がある人は少なかった。
実際、20代で転職歴がある人は、ほとんど書類選考で不合格になった。
20代で3社とか4社経験の人は、相談のみで求人紹介はお断りしたぐらいだ。
採用する企業が無かったのだから仕方ない。
一方で求人企業サイドは、昔から中途採用を行っていた大企業もあったが、
エンジニアを必要とする製造メーカーやIT企業が圧倒的に中心だった。
多くの大手上場企業に新規開拓のTELアポをしても、
「中途採用?
そんなの採用しなくても、うちは毎年優秀な新卒を採用しているから必要ないよ。」
と自慢気に言う会社が多かった。
まだ終身雇用や年功序列の文化が色濃く残っていた。
この世相を大きく変えたのは、バブルとバブル崩壊だ。
バブルよって人材採用需要が過熱し、
新卒で入れなかった企業にも中途で入れるようになった。
そして1993年あたりからバブル崩壊の大不況になった。
初のリストラに踏み切る企業が急増し、終身雇用や年功序列が崩壊した。
採用市場にバブルとバブル崩壊が与えた影響はとてつもなく大きい。
リーマンショックとは比較にならないほど大きな影響を与えた。
日本の銀行が巨額の負債を抱えたバブル崩壊と、それが少なかったリーマンショックとでは
経済に与えるインパクトが全く違った。
だから、2008年のリーマンショックから2年後の2010年には、人材紹介業も回復し始めたが
バブル崩壊の時は回復の兆しが出るまで5年以上要している。
こんな歴史があって、日本経済が衰退し終身雇用や年功序列の文化が崩壊した。
更に、グローバルスタンダードと言う名の欧米規格統一主義が始まり、
ボーダレス経済になり、雇用や採用に関しても欧米文化が入ってきた。
1 新卒より中途採用こそがスタンダードで転職するのは当たり前
2 終身雇用や年功序列ではなく能力と結果で評価し、駄目な人は辞めてもらう。
3 企業は中長期的な観点で社員を育てなくなり、社員のロイヤリティーは顕著に低下した。
そして、 「転職に対する罪悪感」 は払拭され、むしろ 「転職できる人は優秀」 という
雰囲気すら蔓延した。
大手人材紹介会社や転職サイト運営会社も、これを利用し助長したと言われても仕方ない。
一番の問題は、本質的なキャリア形成論が成熟していないことではないかと思う。
単純に 「転職は良い事か? 悪い事か?」 ではなく、
「貴方は何が得意で何を目指し、どのようなスタイルで働きたいのか?
どのように社会に貢献し、結果としてどれぐらいの収入を得たいのか?」
このような本質が議論されず、単純に転職する人が増えてしまった印象だ。
自分なりのキャリアプランを持っていれば、目的のために必要なら転職するし、
必要ないなら我慢もする。
人材紹介業界としても、そのような本質論を考えるべきではないかと思う。
「にんげんはねえ
追いつめられると弱いもんだな
ひとごとじゃない 自分のこと」 みつを
合掌。