「未経験者採用と育成の達人」
私のクライアンントの社長で、未経験者採用と育成の達人がいる。
1回の面接で、社長と営業部長が出てきて方向性を出す。
2回目は現場メンバーとの懇親と社内見学で、特段の違和感がなければ正式内定だ。
どこかおもしろくて、人間的魅力がある人を好んで採用する。
この社長は昔から 「人間関係の天才」 とか 「影の人事部長」 とか言われていたぐらい
人に対する興味・関心・洞察力は他に類を見ないほど優れている。
社内の誰と誰とが恋愛しているかも一瞬でわかるようだが、
そこは口が堅いので言わないで自分の胸の中にしまっておく。
口が堅いので益々信頼されて、多くの人から相談され、どんどん人事情報が集まってくる。
優しいけど恐ろしい人だ。
私などは、
「口先だけは偉そうなことを言っているが、ろくでもなく腹黒い小沢一郎以下の人間だ」
と思われているに違いない。
当たっている。
私も小沢が嫌いだが、それ以下の外道である。
しかし、この社長には外道を許容する器がある。
「にんげんだもの」 煩悩があって当然だと思っている。
だから人間はおもしろく、かわいいのだと。
おもしろいのは、誰もがこの社長を自分の親友だと思っていることだ。
ただ、ご本人が本当に親友だと思っているのは、それほど数多くないかもしれない。
とにかく、それぐらい老若男女誰をも気持ちよくさせてくれる人格者だ。
冒頭の話に戻るが、この人は未経験者採用と育成の達人だ。
先日も3月末に入社されたAさんから、嬉しい電話をいただいた。
Aさん:「武谷 (たけや)さん、何とか最初のQで2件成約しました!!」
私:「えー!! すごいですね。
おめでとうございます!!
だってまだ3ヶ月ですよね?」
*1件成約したことは営業部長から伺っていたが、最初のQ内に2件も成約するとは!!
本当に驚いたのだ。
Aさん:「いやー、途中は内定辞退が出たりして悩んだこともありましたが
何とかやっと2件できました。」
私:「立派ですね。
Aさんが担当している業界は選考スピードが一番遅いのに、
それにもかかわらず最初のQで成約2件は偉いですよ。」
Aさん:「そうですか? ありがとうございます。
近い将来、トップセールスのKさんを追い抜くように頑張ります!!
もう一人のKさんにも大変よく指導していただいています。」
私:「そうですか。
関西出身のKさんは、過去の経歴がAさんに似てますからね。
ともに進学塾の教室長出身ですよね?」
Aさん:「はい。
そんな事もあるのかどうかわかりませんが、大変よく指導していただいています。」
このような電話はAさんだけでなく、
過去、このクライアントに入社された全ての人からかかってくる。
「きめ細かいマネジメントをしてるなー」 と、社長と部長には頭が下がる。
それとともに、
「良い人材を見つけたら、必ずこの会社に紹介しよう!!」
という気持ちがわいてくる。
このように私も良い気分になり、自然とマネジメントされているのだ。
最近独立した後輩も、この会社に紹介するのが一番安心感があると言っている。
要するに、社長以下全員で歓迎し、全員で関わり、未経験者でも育ててくれるからだ。
最近、このような会社は大変珍しい。
かつての日本企業は、ほとんどがこのような会社ではなかったか?
「終身雇用崩壊」 とか 「グローバル競争」 とか 「ネット社会」 とか
環境が激変したと言い訳ばかりしているが、
まずは人間がやるべき事をやってからにしないか?
お互いがどのように行動すれば職場内の信頼関係ができるのか?
社長やマネージャーは何をすればいいのか?
二つしかない。
1 マーケットイン
2 社員に関心と愛情を持ち、最大限の育成努力をする。
この社長は、自分の会社を去った社員とも、「元気か?」 と言って飲んでいる。
そこに打算はない。
ただ以前と変わらない人間関係があるだけだ。
今夜もどこかで誰かと飲むだろう。
「いまここに だれともくらべない はだかのにんげん わたしがいます」 みつを
合掌。