「社長との距離感」
最近、X社に内定したAさんが私に言った。
Aさん:「X社って、どうしてあんなに社長と社員の距離感が近いんでしょうか?」
私:「あの社長は昔からあんな人ですよ。
逆に社員に距離を置かれるのが一番不本意で寂しいと思います。
そんな事では業績も上がらないし。」
Aさん:「へー、うちの会社は社長と話す機会も無いし、
多分、社長も私たちと話したいと思ってないと思います。」
私:「なるほど。
話したいと思ってないというのはどうでしょうか?
話したいけど話せない、きっかけがないとか、恥ずかしいという社長も多いですよ。
確かに社員とのコミュニケーションが不足している社長は多いと思います。
私もそうでした。」
Aさん:「誰でも社長になると、そんなものですか?」
私:「いや、社長は多かれ少なかれ孤独ですよ。
本当は社員とたくさん話したいんです。
しかし、社員に言えないことも山ほどある。
私はバカだから言っちゃいますけどね。」
Aさん:「え? 何を言うんですか?」
私:「本当はやりたくなけど仕方なくやっているとか。」
Aさん:「えー!! そんな事、言っても大丈夫なんですか?」
私:「絶対駄目です。
大丈夫じゃないから辞めたんですよ。
重荷から解放されたかったんです。
無責任です。」
Aさん:「X社の社長はどうなんでしょうか?」
私:「私と違って、社員に言うべき事と言ってはいけない事をはっきり分けています。
とても忍耐強く理性的な人です。」
Aさん:「その線引きは難しそうですね?
社員は何でも知りたがるでしょう?」
私:「社員が知りたがる事は何ですか?
会社のビジョン?社内政治?人事?自分やライバルの評価や給料?」
Aさん:「そうですね。
実際のところ、この会社でこのまま働いて先々良い事があるかどうか?
そういう意味では、ビジョンや人事とか評価とか気になりますね。」
私:「そうでしょう?
人事や評価のような大切な事は個別に話すべき事です。
複数の社員の前で話せません。」
Aさん:「話せないのに、どうして飲みに行くんですか?」
私:「飲みに行くと、それぞれの社員の素の人柄や本音がわかるでしょう?
素の自分を出しながら、社員が思っている事を知るんですよ。
モチベーションは維持できているかとか、不平不満こそ聞きたい。
多分良い事より悪い事を早く知りたいと思っているでしょう。」
Aさん:「社長と言うと自分の事ばかり話す人が多い気がしますが、聞くんですか?」
私:「ホンモノはそうです。
だって自分の事に関心を持ってくれない社長と一緒に仕事をしたいですか?
貴方に何も質問しない社長がいるとしたら、貴方に関心が無いということです。」
Aさん:「確かにそうですね。
質問されなくなったら終わりですね?」
私:「終わりです。
男女関係も同じでしょう?」
Aさん:「・・・・・、それは本当に。」
私:「でも私は家内が帰宅して一緒に食事をする時は、私が一方的に話しています。
後輩と会って飲む時も独演会のように話しています。
はけ口にしています。」
Aさん:「そんな事で大丈夫なんですか?」
私:「いや、いずれ捨てられると思います。
だから、そろそろ家内や後輩の話も聞こうと思っています。
本当に聞けるかな?」
「いのちの根
なみだをこらえて かなしみにたえるとき
ぐちをいわずに くるしみにたえるとき
いいわけをしないで だまって批判にたえるとき
いかりをおさえて じっと屈辱にたえるとき
あなたの眼のいろがふかくなり
いのちの根がふかくなる」 みつを
合掌。