「無機質な市場」
ある人材紹介会社の社長様から、下記のようなメールをいただきました。
大手人材紹介会社に対する不満が書かれてありました。
「同業者だから仕事内容一番分かっているはずなのに、
とにかく紹介すればいいという感じです。
それにCandidateに「意思決定」してもらう方法を知らないから、
ただ納期で縛っている。
あとは、とにかくいろいろ応募させればいいや的発想なので、
採用する企業側からすると、すごく使い勝手が悪い。
最終的に来るのか来ないのかが全然分からないから。
武谷さんの場合は完璧に握ってますけど。
握られ過ぎていて、こっちがコントロールされているような。」
私も大手に在籍していた時は、同じような仕事の仕方をしていたのでしょう。
とりあえず登録者に応募はしていただくけれど、ちゃんと動機形成できていないことも
あったと思います。
しかし、「最終的に来るのか来ないのかが全然分からないから。」 というような事は
あまりなかったと思います。
登録者の気持ちは、ある程度つかめていた気がします。
「多分、この人はA社よりB社を選択するだろう。」 とか。
これは、今の大手人材紹介会社の人材紹介コンサルタント(キャリアコンサルタント)も
ある程度つかんでいるはずです。
ただ、「どこの会社に決まっても1件は1件だから、決まればどこでもいいや。」
という部分があって、この社長様はその思い入れの無いやり方に不満を抱かれていると
思います。
大手人材紹介会社の中にいて、管理職になりプレイヤーをやらなくなると、
転職市場が、「無機質な市場」に見えて来ることが怖いところです。
IT市場、電気・電子・機械・化学の市場、メディカル市場、消費財市場、金融・不動産市場
サービス業の市場、など、色々な市場の中で優先順位をつけて、どの市場をターゲットに
どのように求人開拓をして、どのように登録者を集めるか?というような話を常にしていると、
1社1社の企業やお一人お一人の登録者の顔が見えなくなってくるわけです。
そうすると、「採用」「転職」というお客様にとっては大変なドラマが連日起こっている事に
対して、喜んだり、悔しがったり、感動したりする気持ちが薄らいできます。
「はーい、今月は20億円の目標に対して22億円、110%で達成しました!!」
パチパチパチ!! こんな日々の繰り返し。
そんな中でも現場のメンバーは、必死に1社1社、お一人お一人と向き合ってやっている人が
多いと思います。
しかし、心身ともに疲れて辞める社員が、昔では考えられないほど増えています。
限られた市場の中で競争は昔の数十倍激しくなっているので、自由主義経済の中では
仕方ない宿命かもしれませんが、そこは社長以下リーダーが何とかしなければいけません。
私は原始的な人材紹介が好きなので、それをやり続けたいと思います。
大いに喜んだり、悔しがったり、感動したりしながら。
それが28年前にこの仕事を選んだ原点です。
「生きているうち はたらけるうち 日のくれぬうち」 みつを
合掌。