「表面的な模擬面接はやるな!!」
最近、二人の模擬面接を行った。
二人に共通していたのは、「等身大の自分を出してはいけない」 と思っていた点だ。
Aさんはスポーツに全力投球した青春時代を送り、全国大会にも出場した。
そのスポーツに賭けたプロセス、成功や挫折がAさんの原体験であり、
現在の人格形成や価値観、対人関係にも大きな影響を及ぼしている。
私:「なぜ、スポーツの事をもっと話さないのですか?」
Aさん:「いろいろ複雑な思いがありまして。良い事ばかりじゃなかったし。」
私:「貴方の人生からスポーツを取ったら何が残るんですか?
そんな大切な事を話さないで、淡々とした態度で自分を隠して面接に臨んで
内定すると思ってますか?
聞かせてくださいよ。
スポーツをやったプロセスで何があったのか?」
Aさんは少しずつスポーツの事を話し始めて、その後、1時間ぐらいスポーツの話で
盛り上がった。
普段はクールなAさんが、最後はたくさん笑ってくれた。
私:「Aさん、面接でスポーツの話をしてくださいよ。
いい話がたくさんあるじゃないですか?」
Aさん:「いいんですか? スポーツの話なんかしても。」
私:「企業はスキルだけで人を採用するわけじゃないですよ。
まともな会社なら全人格的な評価をして採用すると思います。
そのためには、自分の過去の成功も失敗も含めて話すことですよ。」
Aさん:「そう言われると少し気が楽になりますね。」
Aさんが笑ってくれて良かった。
もう一人のBさんは、スポーツなど何か一つに打ち込んだ経験は無い人だ。
無難に大学を卒業したが、1社目は深く考えずに入社し選択ミス、2社目で軌道修正し
業績も上げて立ち直った。
私:「お話を聞いていると、1社目の失敗を必要以上に覆い隠そうとしていますね。
不自然ですよ。」
Bさん:「他の人材紹介会社のキャリアコンサルタントから、ちゃんと理論武装して
突っ込まれないようにした方が良いとアドバイスを受けたのですが。」
私:「一般論では前後のつじつまが合わせられるなら合わせた方がいいですよ。
ただね、Bさんの1社目の選択ミスは、つじつまを合わせられる失敗じゃない。
ただ、Bさんが若かったから、何となく雰囲気で入社してしまっただけだから、
『1社目は完全に私の失敗です。若気の至りでお恥ずかしい限りです。
ですから見切りをつけて、2社目で軌道修正しました。』 とあっさり自分の
失敗を認めた方が好感度が高いですよ。」
Bさん:「そんなものですか?
自分の失敗を面接でどこまで言っていいのか悩みます。」
私:「失敗を屁理屈でごまかして、Bさんは窮屈じゃないですか?」
Bさん:「そうなんです。すごく窮屈です。」
私:「更に、そんな屁理屈が面接で通用すると思いますか?」
Bさん:「いやー、自信が無いです。
つじつまを合わせようとすると自分が硬くなるんですよね。」
私:「そうですよ。そんな無駄なつじつま合わせは止めましょう。
素直に失敗を認めたら、相手はそれ以上突っ込んできませんよ。
屁理屈を言うと逆に突っ込まれるでしょう?
もっと言えば、Bさんに対する不信感が生まれます。」
Bさん:「そうですかー? それはまずいな。
確かにこれまでは面接で本来の自分を表現できていない気がしていました。」
私:「失敗は自分から素直に認めましょう。
第一、この世の中に失敗していない人などいませんよ。
面接官だって必ず何かで失敗しています。」
Bさん:「わかりました。そうします。
その方が自分を素直に出せる気がします。」
私:「Bさんが自ら失敗を開示することによって、面接官もリラックスしてBさんに親近感を
持つと思いますよ。
失敗の後に軌道修正したんですから自信を持ってください。」
Bさん:「わかりました。何だか気が楽になりました。」
今後、二人がとんとん拍子で内定する保証はありません。
しかし、屁理屈理論武装すると、もっと内定する見込みはありません。
仮に屁理屈理論武装でごまかして内定しても、入社後どうなると思います?
模擬面接が必要な人は確かにいますが、
「つまらん表面的な模擬面接はやるな!!」
と言いたいです。
小手先のアドバイスなら不要です。
「なるべくなら うそのないほうがいい」 みつを
合掌。