希望職種 「潜水夫」 なんじゃそれは!!
今日は私が感銘を受けた、あるキャリアコンサルタントの話を書きます。
1999年ぐらいかな?
営業部長と事業企画部長を兼務していた時です。
事業企画部長と言っても、仕事は優秀な課長やメンバーがやってくれるので私は何もしてません。
ただ毎週1回、社長の岡﨑さんとの1時間の情報交換のミーティングをしてました。
そこで、
岡﨑さん:「合併騒ぎも落ち着いたし、そろそろ全社マネージャー研修をやらにゃいかんな。」
私:「はー、そうですか?」
*私は研修嫌いです。
岡﨑さん:「よし、東京に全国から集めて大いに語り合おう!!」
私:「わかりました。語り合えばいいんですね?
それなら是非やりましょう!!」
という感じで、全社マネージャー研修が実施されることになりました。
宿泊もできる中野の研修施設でやったと思います。
全社でマネージャーという職位にある人が80人以上いました。
それを10班以上に分けて、現場の課題とか今後どうしよう?とか自由に議論したと思います。
私も一つの班に混じって話を聞いていました。
そこで、Yさんと言うキャリアコンサルタントのマネージャーの話が大変おもしろく
感銘を受けました。
Yさん:「いやー、この前、CA(キャリアアドバイザー)のFさんから呼ばれてさー、
『Yさん、幾らなんでも希望職種に潜水夫と書いてある人を私に回す事ないでしょう!!
うちには潜水夫の求人など無いし、この人の希望には応えられないよ。』 って言うんだよ。」
我々:「それでどうしたんですか?」
Yさん:「いや、Fさん、この人を担当してください。
希望職種が潜水夫ということは、きっとダイビングが趣味だと思います。
だから、この人に会ったら開口一番、『貴方の趣味は、ダイビングですか?』
と聞いてみてください。
それで相手がうなづいたら、『素晴らしい趣味ですね!!僕も若かったらやってみたいな。』
と言ってください。
そうすれば、きっとこの若者もFさんに心を開くでしょう。
それからFさん、ダイビングは土日は混雑します。
だから、ゆっくり潜れる平日が休みの会社を紹介してあげるといいと思いますよ、
とアドバイスしたんだよ。」
我々:「ほー、おもしろいアドバイスですね。
それでどうなったんですか?」
Yさん:「Fさんが後から来てさ、『Yさんの言う通りにやったら、この若者は、Fさんみたいな
年輩の方に私の趣味を理解していただいたのは初めてです!!ありがとうございます!!
と感動してくれて、本当に平日が休みの牛丼の松屋の店長候補で決まりましたよ!!』
って言うんだよ。俺も嬉しかったねー。」
我々:「それは凄い話だな。参考になるな。
普段一体どういう話を登録者としてるの?」
Yさん:「俺の担当は若者ばかりだし初回面談で信頼されなきゃ終わり。
だから、初めの30~40分は相手の趣味とか、気になっている話題とか、
そんなやわらかい事ばかり話してるよ。
そうやって一度心を開いてくれれば何でも俺に相談してくれるし、
俺が紹介する会社は全部応募してくれる。
若者相手に初めから堅い話じゃ、この層の人は決められない。」
我々:「うーん、凄いね。
簡単に話しているけど、それってなかなかできないよね。
ついついこっちのペースで話そうとしてしまうよね?
でも、それが駄目なんだね。」
Yさん:「うん、自分の事を受け入れてくれない人に本音を話す気しないし、
本音を話してくれないから、内定しても辞退されるんだよね。」
我々:「うん、そうだね。
でも、それは若者に限らず全ての年齢や職種の登録者対応においても言えることだね。
みんなが、それを実践できたら凄いね。
いい話だ。」
このように、「受容」と「共感」を自然と実践している人がいて大変感銘を受けました。
この班の話が大変盛り上がり、終わった時には宴会が終わりかけていました。
岡﨑さん:「武谷(たけや)、何を話しとったんだ? こんな遅くまで。お前の班が一番遅い。
まあとにかく飲め!!」
私:「いやー、感動しましたよ。
Yさんから良い話が聞けて。」
と言って、一部始終を岡﨑さんに話しました。
岡﨑さん:「よし!! それはいい話だ。
これを何かのカタチにできんか?
Yの話を全社に広められんか?」
私&前原:「人間の温もりが伝わる共感カウンセリングですね?
人の温もりだから体温ですね?
体温は36.5度。
『36.5度プロジェクト』 を作って全国に広めましょう!!」
岡﨑さん:「よし、それで行こう!!
じゃあ、プロジェクトの委員長はYだ!!
早速、来週メンバーを人選して来月から始めてくれ!!」
と、酒の勢いも手伝って、とんとん拍子に話が進み、Y委員長の下 『36.5度プロジェクト』が
スタートしました。
思いつきのようですが、一番大事な「受容」と「共感」がテーマですし、
CAがいかに自分の感情をコントロールするか? いかにストレスをためないようにするか?
など非常に重要な話です。
発足後数年に渡り、このプロジェクトは存続し、リクルートにしては長寿命のプロジェクトに
なりました。
希望職種が「潜水夫」でもいいじゃないか。
そこにキャリアコンサルタントの介在価値がある。
「ひとの世の幸不幸は人と人とが逢うことからはじまる よき出逢いを」 みつを
合掌。