「入社前後のギャップ」
極力、入社された方と飲みに行くようにしている。
先日、昨年当社経由で転職されたAさんと飲みに行った。
今時珍しいぐらい、人生、仕事、家族、友人など全てに対して熱い人だ。
前職は熱血社長が創業した、めちゃくちゃ忙しいベンチャー企業だった。
今回転職したのは、落ち着いた歴史のある典型的な日本企業だ。
前職では無我夢中で働き、気がついたら30代。
自分の将来や家庭の事を考える暇も無かった。
だから、今回は前職とは反対の落ち着いた会社を選んだ。
一歩一歩着実な人生を歩むために、ワークライフバランスを適正なものにしたかったからだ。
前職が嫌いだったわけではない。むしろ好きだった。
しかし、20代だからこそ働ける会社と、30代・40代になっても働こうと思う会社は違ってくる。
心身の若さ、その世代によって求める価値観、家族の状況、経済事情などが大きく変化するからだ。
Aさんは、転職の最大の目的であった「ワークライフバランスの適正化」 には成功した。
だから、大きな不満は無いし実際に元気そうだった。
ただ、熱いベンチャー企業に長期間在籍し、歴史ある日本企業に転職すれば、
当然ながらカルチャーギャップは大きい。
私も同様だったが、自分の意志で辞めたのに、やたら前職の良い点ばかりが思い出され
悪い点は忘れがちになる。
また、新しい職場の良い点より悪い点(前職より劣っている点)に目が行きがちだ。
これは危険信号だと自分に言い聞かせて冷静になれる人は偉い。
Aさんは、それができる人だ。
ただ、私のように精神年齢が低い人間は、
「よーし、この会社の悪い点を俺が直してやろう!! それが俺の使命だ!!」
と勘違いして、周囲の人との信頼関係もできていないのに暴れて自滅する。
多くの人は暴れる所までバカではないが、心の中に悶々とストレスを溜め込み
仲の良い友人にだけ不満をもらし、いずれは耐えかねて辞めてしまう。
転職を繰り返す人は、大なり小なり、これが癖になっている。
だから、転職をする時に大事なのは、新卒の心に戻る事だ。
「自分には立派な社会人経験もあるしスキルもある。それを買われて採用されたんだ。」
などと思ってはいけない。
業務スキルは必要に応じて発揮すれば良い。
しかし、前職のカルチャーを、未だ信頼関係ができていない新たな職場で、頼まれもしないのに
披露してはいけない。
周囲の人から、「前の会社の事を教えてください。」 と言われるようになるまでは、
ひたすら新しい会社のカルチャーに、自分の身をひたす事だ。
新卒に戻ったつもりで。
正しいとか、間違ってるとか、余計な事を考えてはいけない。
*私の中には、この二つしかないが。
ニコニコして、あるがままに受け入れなければ長持ちしない。
採用企業側も面接の時点では、
「入社したら、是非、うちの社内をかき回してよ!!」
などと言うが、本当にそんな事を許す会社はほとんどない。
「能ある鷹は爪を隠す」
これは旧い言葉だが、やはり当たっている。
それが嫌な我儘な人は、独立するしかない。
「にんげん 我慾のかたまり にんげんの わたし」 みつを
合掌。