「人材紹介会社のM&Aは成功するか?」
最近、人材紹介会社のM&A事例が散見されるようになった。
しかし、残念ながら、私は成功事例をほとんど見た記憶がない。
例えば昨年、エン・ジャパンがウォールストリートアソシエイツを買収した。
エン・ジャパンが自力で人材紹介事業を立ち上げるのに苦戦しているからだろう。
今のところウォールストリートアソシエイツの業績は好調で、悪い影響は出ていないようだ。
しかし今後、エン・ジャパンが無用な口出しをしたり、ウォールストリートアソシエイツの
給与制度をいじった瞬間に、優秀なコンサルタントから雲散霧消してしまうだろう。
ただ、ずっと何も口出しせず、配当金だけ吸い上げても意味が無いので、
どこかのタイミングで何かが起こると考えるのが普通だろう。
コラボでシナジー効果を生み出すのは、頭で考えるほど簡単ではない。
そんな意味でも、人材紹介会社のM&Aは成功するのだろうか?
私は、特定業界や特定職種、特定地域に特化した人材紹介会社を、
資本力のある人材紹介会社が買収するのは、わずかながらうまく行く可能性があると思う。
しかし、各社各様にカルチャーが違うので、これも難しいだろう。
更には、人材紹介業をやった事がない会社が、人材紹介会社を買収しても、
買収後のマネジメントがうまく行かず失敗している事例が多い。
大手の金融・商社・メーカーなど大資本系の人材ビジネス子会社で、
人材紹介業がほとんど立ち上がっていないという事実が証明している。
本業さえ順調であれば、子会社の人材ビジネスなどに本気になるわけもなく、
逆に連結子会社が赤字にでもなってしまえば、すぐにあきらめてEXITしてしまう。
所詮、本業で必要でなくなった中高年社員の天下り先でしかない。
この天下り役員たちの高い年収を、年収の安いプロパー社員が支えるという
かわいそうな現状がある。
それから、大きな人材紹介会社が、別の大きな人材紹介会社を買収するのは意味がない。
クライアント(求人企業)の顔ぶれは大半だぶっているし、登録者も重複登録している
ケースが多いからだ。
また、買収された会社のコンサルタントのモチベーションが著しく下がってしまう。
これは、この業界で仕事をしている皆さんなら、誰もが同じように考えるのではないか?
それでは、中小紹介会社同士が合併する事に何か意味はあるか?
これも、各々が違う分野で強みを持っており、その分野がそれほど離れていない場合、
例えば、金融分野に強い会社とコンサルティング分野に強い会社が合併するケースなどは、
ある程度のシナジー効果があるかもしれない。
ただ、いずれにしろそこで働く優秀なコンサルタントが辞めてしまったら、
人材紹介会社の合併の意味はなくなる。
「のれん代」 だけで巨額の価値を持つ人材紹介会社など無いからだ。
それぐらい個々のコンサルタントに依存している原始的な産業だと思う。
特に一気通貫スタイルでやっている中小紹介会社は、個々のコンサルタントに対する
依存度が極めて高い。
いずれにしても、この数年でこの業界は大きく変わるだろう。
少人数で独立開業する人が益々増えるのは間違いない。
何が起こっても生き残れる準備が必要だ。
諸行無常。
「その場がきなけりゃ わかんねえ」 みつを
合掌。