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キャリア官僚が転職相談に来た!!

キャリア官僚が転職相談に来た!!
 
何年も前の話です。
 
まだ、郵政省 があった時です。
 
「開成高校⇒東大⇒郵政省」 という絵に描いたような20代後半のキャリア官僚君が
 
転職相談にお越しになりました。
 
面談ルームの着席するや否や1時間ずっとしゃべりっぱなしです。
 
官僚君:「私は官僚になるべくして官僚になった。
     現在はNTTの経営の監督をしている。
     若い頃は地方都市の郵便局長を経験したが、上司は居ないし周囲の人が大事にしてくれて
     一番楽しかった。
     今は港区青山の官舎に住んでいる。
     省内随一の忙しい部署なので毎日終電で帰っている。」
 
私:「ほほー、凄いですね。忙しくて大変ですね。」
 
官僚君:「仕事が厳しくても忙しくても、それは一向に構わない。
     そんな事よりも、これだけの仕事をしているのに給料が安い!!
     東大の同期は大手都市銀行などに入り、既に1000万円近い年収だ。
     納得できない!!」
 
私:「うーん、それは初めからわかっていた事でしょう?
  給料は安いけど公費がたくさん使えるとか、官舎がめちゃくちゃ近くて広くて安いとか、
  将来は何回も天下りして退職金を何回ももらえるとか、民間企業のように倒産しないとか、
  目先の給料よりも大きな得があるから、官僚の道を選んだんじゃないんですか?
  ところで、今の年収は幾らですか?」
 
官僚君:「700万円弱しかない!!
      どう思いますか!!」
 
:「高い!! 決して安くない!!
   確かに貴方の能力や激務を考えれば安いと思う。
   しかし、天下りできるとか中長期で考えれば、また、給料以外の福利厚生なども
   含めて考えれば決して安くない。」
 
官僚君:「そうかなー? 納得できないな。」
 
私:「貴方ね、貴方と同じ年の人の平均年収はどれぐらいか知ってますか?」
 
官僚君:「自分ぐらいかなー?」
 
:「とんでもない!!
  貴方の半分ぐらいですよ!!
  500万円もらっていれば、かなりいい方ですよ!!
  それで社宅も無いし天下り先も無いよ!!」
 
官僚君:「それは東大にも国家公務員上級試験にも合格しなかったんだから
     仕方ないじゃないですか?」
 
:「そんな事を考えているから官僚は批判されるんですよ!!
  貴方は自分が特権階級だと言っているのと同じですよ!!」
 
官僚君:「しかし、そのために子供の頃から他人より努力して勉強してきたんじゃないか!!
     やりたい事も我慢して。」
 
私:「うん、貴方が人一倍努力してきたことは認めますよ。
  ただ、国家公務員になるという事は、給料以外に何か国のために尽くすとかないんですか?」
 
官僚君:「もちろん、ありますよ。
      だから、激務に耐えて早朝から深夜まで身を削って働いているんですよ!!」
 
私:「でも、大学の同期より給料が安いのが嫌なんだね?」
 
官僚君:「はい、割り切れませんね。」
 
私:「じゃあ、できるかどうかわからないけど転職しますか?」
 
官僚君:「今すぐ転職しようとは思いません。
     私は、そんなバカじゃない。
     バブル崩壊の現状では、大手都市銀行も募集してないでしょう?
     友人も、『もう少し待て』 と言ってましたよ。」
    今日ここに相談に来たのは、3年後、5年後に一体どれぐらい求人が増えているか?
    何年後なら都市銀行に転職できそうか?
    それを聞きに来たんです。」
 
:「はー!!
   うちは、シンクタンクじゃないんですよ!!
   まして、私はエコノミストでもアナリストない!!
   単なる転職アドバイザーです。
   そんな3年後、5年後の景気の話なら、経済企画庁か大蔵省か通産省にでも聞いてくださいよ。
   でも、誰に聞いても将来の景気予測など当らないと思うけど。」
 
官僚君:「そうですか?
     その程度の予測ができないとは失望しました。」
 
私:「はい。
  景気も雇用も生き物、ずっと循環することだけは間違いないです。
  全くお役に立てず済みませんでした。」
 
官僚君:「じゃあ、都市銀行の求人が出たら教えてください。
     何年後でも構いません。」
 
:「済みませんが、ご登録データは情報管理徹底の為、定期的に処分させていただいています。
  景気が上向いた頃に、再登録にお越しください。
  お待ちしております。」
 
このように民間企業で働かれている方とは全く異なる、おもしろい面談でした。
 
彼は今どうしているのかな?
 
「かねが人生のすべてではないが有れば便利無いと不便です 便利のほうがいいなあ」  みつを
 
合掌。 

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武谷 広人
人材ビジネス経験の蓄積と、自らのトップマネジメント経験を強みとする。経営幹部から専門職まで約500件の案件を成功に導く。

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