「一気通貫制(両面制)から再び分業体制へ」
1996年ぐらいでしょうか?
1993年から1994年ぐらいに、地域別営業組織から業界別営業組織に大転換し、しばらくの間は
試行錯誤で混乱しましたが、次第に組織が整理され、若手も両面制(一気通貫制)の業務に慣れて
それぞれのグループで各業界知識や各専門職種の知識も蓄積されて来ました。
これによって、改革前のようにやみくもに担当地域の求人開拓を行うとこは無くなり、業界ごとに
大手リーデンングカンパニー群、中堅企業、新興ベンチャー企業、と言うように戦略的に求人開拓を
行うようになりました。
若手社員が、自分と同年代以上のご登録者(転職希望者)の方に対応できる知識やスキルも
身について来たことも大きな収穫です。
私が若手CA(キャリアアドバイザー)の日本の草分けだと自負しているのですが、
私が始めた時はハローワークみたいに予約も無く突然ご登録者が来社されるのです。
更に全職種対応で、一体どんな仕事をやっている方が来社されるかもわからないのです。
その日の一人目は営業職、二人目はSE、三人目は経理、四人目は電子回路設計、
というような事が頻繁に起こります。
また、ご年齢もバラバラです。
これでは的が絞れず専門知識も身につきません。
当然、マッチング精度も悪くなります。
改革後は、面談は全て予約制となり、20代オープン系SE担当とか、30代汎用系SE担当とか、
CAの担当分野の細分化が急速に進み、専門知識も身につきマッチング精度が向上しました。
リクルート人材センター(現リクルートエージェント)が、昔このように両面制(一気通貫制)で
やっていた時期があるという事を知っている方はほとんどいないでしょう。
これは既に退職した鬼マネージャー のSさんが、
Sさん :「2年ぐらいは練習だから、両面制(一気通貫制)でやってみよう!!
練習、練習!! まあすぐ慣れるよ。
でもいずれまた分業制に戻す時が来るぜ。」
と言っていたのです。
結果は、Sさん の予告通りになりました。
私は左遷されエグゼクティブサーチ事業部にいましたが、業務上連携しなければならない
ITグループの末席に席を置かせてもらっていました。
ITグループを他のグループに先駆けて、いち早く軌道に乗せた改革の獅子K君も、
なぜか左遷され、私の隣でやる気なさそうに適当にエグゼクティブサーチの仕事をやっていました。
二人とも6時とか7時に帰宅してました。
ところが、岡崎社長体制になり、K君の先進的な考え方・センスが目に留まり、彼は事業企画に
に引っ張られて行きました。
そんなこんなしている中、常勝ITグループの業績にかげりが出て来ました。
先輩マネージャーSSさんも、各メンバーも気づいていました。
既に、ITグループだけで求人企業1000社以上、毎月の登録者数も300~400名に到達。
メンバーも10名程度の部隊に拡大し、両面制(一気通貫制)では、ボリューム対応に限界が
見え始めたのです。
リクルートの社員は自分の仕事のおもしろさより、会社やグループ全体業績拡大を優先します。
そういう人が評価される風土・仕組になっています。
先輩マネージャーのSSさんだけでなく、メンバーからも、
「このままでは、ITグループの業績は頭打ちです。
この辺でITグループ内で分業体制に移行しましょう!!」
という声が出始めました。
このような声が出始めると流れは急激にその方向に走ります。
このようなプロセスで、業界別一気通貫制から業界別分業制に移行しました。
ITグループの動きに他のグループも追随しました。
IT、EMC(電気・電子・機械・化学)、コンシューマー&サービス、メディカル、金融&コンサルティング
不動産・コンストラクション、というように自然と分かれて、業界内分業体制が確立しました。
しかし、特定業界内におさまらない横断的な職種が残ります。
その一つが、総務・人事・経理・財務など事務系スペシャリスト・グループとなりました。
もう一つが、若手営業職グループです。この人たちも業界の垣根を越えて転職します。
この二つを業界横断職種と呼んでいました。
この二つのグループには法人営業(RA)はいません。CAだけです。
ここのCAの使命は、全ての業界別グループに人材を供給し登録者の機会を最大化する事です。
この辺まで整理され、大枠改革後の新体制が落ち着き成長軌道に乗ったと思います。
分業体制の最大の目的は、マッチング機会の最大化です。
キャンディデート(ご登録者)を自分や自分の所属グループが担当する企業に決めようとする力学が
働きやすい両面制(一気通貫制)では他のコンサルタントや他のグループに対する紹介が出にくい。
これが行き過ぎると機会損失が起こります。
「あーあ、最初から他のグループにも紹介していれば決まったのに。
でも、そんなの自分の業績にならないから関係ない。」
このような両面制(一気通貫制)のデメリットを埋めマッチング機会を最大化し、全体業績を
大きく伸ばす力学を働かせるのが分業制です。
情報が薄まりマッチング精度が低くなるいうデメリットは覚悟の上で、機会損失を最少化する事を
優先したシステムです。
これは、リクルート人材センター(現リクルートエージェント)の100%オリジナルのシステムで
世界に類を見ないものでした。
自然と全員が全体の事を考えて工夫したら、こうなっただけです。
しかし、コンサルタントが個人事業主的な間隔を持った紹介会社には理解されにくいです。
例えば、外資系人材紹介会社に説明しても全く理解されませんでした。
日本は遅れて始めたけど、チームワークでは追い越したと思いました。
多分、日本人の国民性も大きなファクターでしょう。
大変面倒くさい分業制と言う個人のエゴを殺すチームワークは理解されにくでしょう。
私は今独立して、一気通貫制(両面制)でやっています。
実に心地良く実に簡単で、これがこの仕事の原点だと思います。
分業制のような半分他人に依存しなければならないストレスは無い。
事務処理も少ない。
最高です。
少人数なら絶対に一気通貫制(両面制)です。
二度と分業制などやりたくない。
さて、この水と油のように見える二つのシステム。
双方の良い点をミックスしたシステムや、それを実行できる社員を育てられると
本当に凄いエージェントになるでしょうね。
既に様々な試みをされている会社もありますが、志の高いエージェントに
是非チャレンジしていただきたいと思います。
リクルートエージェントが創業してから20年程度も時間をかけて作ったシステムです。
他の人材紹介会社は同じ時間をかけるのは無駄です。
リクルートエージェントのシステムの良い点だけを真似して、弱点を補強する手段を徹底して
考え実践すれば一時期のインテリジェンスのように急成長できます。
前提として、インテリジェンスのように社員の質や社風を良くすることが大切です。
「ひとつの事でもなかなか思うようにはならぬものです
だからわたしはひとつの事を一生けんめいやっているのです」 みつを
合掌。