「人材紹介会社の営業戦略」
私は、1990年から中央支社(神田)で、東京の東側エリアの市場開拓を始めました。
その後、池袋支社もできましたので、当時のリクルート人材センター(現リクルートエージェント)の
拠点は下記のように展開されていました。
新橋(本社)、新宿、中央(神田)、池袋、横浜、名古屋、以上6拠点でした。
当時、西日本は関西リクルート人材センター(現リクルートエージェント)の担当エリアでした。
梅田(本社)、難波、京都、神戸、福岡、以上5拠点でした。
拠点展開には、二つの目的がありました。
1 そのエリアの求人企業開拓
2 そのエリアの転職希望者の集客
従って、各支社には求人開拓の営業マンだけでなく、来社される転職希望の方に対応する
キャリアアドバイザーも居ました。
中央支社の場合では、営業マン&営業ウーマンが最大で10名程度、営業アシスタント2名、
求人広告制作担当1名、キャリアアドバイザー5~6名、受付さん4名(夜の担当含む)、
そして私、支社長まで含めると、25名程度の結構な人数になります。
中央支社は、銀座線神田駅真上に150坪程度のオフィスを借りておりました。
新橋や梅田は本社機能を持っておりましたので、多くの間接部門スタッフや、役員もいますし、
かなり大きなオフィスを必要とします。
さあ、本社2つ、支社9つ、合計11拠点で展開したメリットはあったのか?
結論はほとんどメリットは無かった。
*名古屋、福岡など遠隔地の拠点は例外としておきます。
①東京の東エリアの求人開拓は、神田からでなくても新橋本社の営業部隊でも十分できます。
②登録者は、神田に支社が無くても新橋にお越しいただけます。
*転職希望の方々は、派遣業界ほど職住接近を求めていません。
自宅から近い会社より、多少遠くても良い会社を探しています。
良い求人があって、良いサービスを受けられるのであれば、多少遠くても
新橋本社にお越しいただけます。
では、支社展開のメリットを何か挙げろと言われたら、支社内の営業とキャリアアドバイザーとの
心理的な距離が近くなることぐらいでしょう。
その他のスタッフも含めて、支社としての一体感醸成はできます。
期待された登録者集客に関しては、拠点を多く出すほど、その効果が薄れます。
√2(ルート2)=1.4142 √3(ルート3)=1.732 と言うような具合で、3拠点体制にしても2倍には
ならない。
*拠点を増やすより、来社以外の郵送登録や、インターネット経由の登録を増やすなど、
アクセス手段を多様化させた方が効率的だった。
逆に、当時のデメリットを挙げろと言われたら、たくさん出てきます。
1 オフィスの分散によるマネジメントパワーの分散。マネジメント力の格差拡大。
2 オフィス賃料増加。
3 各支社が全体最適でなく部分最適に走る。
例えば、支社内での登録者囲い込みによる機会損失が起こる。
4 一人の営業が全産業の企業を開拓するので、業界ごとマーケティング・市場深耕が進まない。
5 一人のキャリアアドバイザーが、全職種の転職希望の方々に対応するため、
職種ごとのマーケティング・市場深耕が進まない。
*職種ごとの市場分析を行い、細分化したターゲットに対する登録者募集施策を行わないと
求人に適合する人材が増えない。
単なる拠点増設には、上記のようにデメリットが数多くあり、首都圏の5拠点は新橋本社に全て
撤収統合、関西4拠点も梅田本社に撤収統合することになったのです。
*現在は、各社もう少し意味ある拠点展開をされているようですね。
そして最終的には、求人開拓営業は産業別グループに分化し、
更には、ベンチャー、新興市場、超大手、外資など、企業のステージ別にも細分化していきました。
また、キャリアアドバイザー部門は職種別グループに分化し、更には、エグゼクティブ、中間管理職、
中堅社員、第二新卒、新卒など、人材のステージ別に細分化していきました。
これが現在のリクルートエージェント及び、それを追随した他の大手人材紹介会社の原点です。
このようにまとめると簡単ですが、この体制ができあがるまでには、
20年に及ぶ議論・試行錯誤があり、毎晩酒を飲みながらも白熱喧嘩して大変だったわけです。
多くの代償を払ったわけでして、今後はその辺のドロドロの経緯も書いていきたいと思います。
今日は真面目な話でしたが、いつものようなくだらない話も、更に書き続けたいと思います。
「ひとつの事でもなかなか思うようにはならぬものです
だからわたしはひとつの事を一生けんめいやっているのです」 みつを
合掌。