リクルート人材センター(現リクルートエージェント)は、17年前まで前金制(リテイナー)
だったのです。
我々営業マンは、その前金受注金額が個人やグループの月間目標、Q(四半期)目標に
なっていましたので、必死で求人企業(クライアント)から前金をいただく営業活動をしておりました。
求人企業から前金をいただくと、それに伴いどんどん求人が増えます。
それも紹介が困難なエンジニアの求人が増えやすい。
しかし、キャリアアドバイザー部門は別のマネジメントラインで動いている。
キャリアアドバイザー部門は、決定人数目標を追っていました。
しかし、その決定人数目標は営業サイドの前金受注目標に連動したものではない。
登録人数目標も明確な数値が無かった。
このように、営業(リクルーティングアドバイザー)部門とキャリアアドバイザー部門との
組織的な連携が弱い状態であり、肝心なマーケティング戦略も不在でした。
また、営業(リクルーティングアドバイザー)部門は若手ばかりで平均年齢20代、
キャリアアドバイザー部門は大企業のOBばかりで平均年齢は60歳近い。
お互いに人間性は良い人ばかりだが、やはり、ジェネレーションギャップや遠慮はありました。
このような状況ですので、営業マンが頑張って求人が増えれば増えるほど、
お客様(クライアント)からのクレームが多発します。
例えば、下記のような電話が毎日かかって来ます。
求人企業:「求人頼んでから2ヶ月経つけど、まだ3人しか紹介がないじゃないか!!
一体どうなってるの!!
社長も部長もカンカンだよ!!」
とか、
求人企業:「おい、全然実らないよ!!
人数ばかり多く紹介すればいいってもんじゃないよ!!
ちゃんと要件を満たした人を紹介してよ!!」
とか、究極は、
求人企業の社長:「おい、もうすぐ1年経つけど5人の目標なのに、2人しか決まってないな!!
お前は詐欺師だな。
もういいから、残りの3人分のお金を返せ!!」
とかです。
*基本契約期間は1年間でした。
しかし、こんなクレームでいちいち落ち込んでいられません。
具体的な対処法は、こんな感じでした。
まずは、どにかく相手が怒る声よりも、めちゃくちゃ大きな声で謝り倒す。
私:「いやー社長!! どうも済みませーん!!」
めちゃくちゃ大きな声で謝ると相手がびっくりして、ちょっと冷静になっていただける。
そこからが、苦しい局面を打開する提案です。
対処法①:「そうですね。ご紹介の人数が少なくて申し訳ございません。
(的外れな紹介が多く、申し訳ございません。)
私の責任ですが、当社のキャリアアドバイザー部門の御社に対する理解が
足らないようです。
誠に恐縮ですが、一度ご足労いただき、当社のキャリアアドバイザーに対する
御社の説明会を開催させてください!!
そうすれば、御社の魅力をキャリアアドバイザーが直接理解できますので、
今後のご紹介が増えると思います。」
*お客様とキャリアアドバイザーとの距離を近づけることによって紹介を促進する。
また、あまりに高いご期待をされるお客様には、キャリアアドバイザーから転職市場の実態を
赤裸々に話してもらい、期待値調整させていただき、採用スペックを緩和していただく。
若い営業マンが話すより、実際にご登録者と接している年輩のキャリアアドバイザーが
話す方が説得力がある。
とか、
対処法②:「そうですね。エンジニア5人の目標に対して、まだ2人ですね。
誠に申し訳ございません。
それでは、今回は特別に期間を延長して活動するように上司に決済を仰ぎます!!」
とか、
対処法③:「社長、エンジニア以外にも求人はありますよね?
先日も営業職や経理の求人広告を出されているのを拝見しました。
今後はエンジニア以外の職種の人材もご紹介させてください!!」
とか、ケースバイケースです。
ただ、これは、あくまでクレームが起こってからの事後対応に過ぎません。
いかにクレームを起こさないか? の事前の予防の方が大事ですよね。
そのために具体的にどうするか?
下記は、17年以上も昔の話で、全く原始的なので大いに笑ってください。
私:「今回は求人のご依頼をいただき、誠にありがとうございます。
早速ですが、御社のために当社のキャリアアドバイザーを多数集めますので、
初めに御社の会社説明会を開催したいのです!!
私が間接的に説明するより、社長が直接キャリアアドバイザーに御社の魅力や
求める人物像をお話しいただいた方が絶対に効果的です!!」
社長:「客の俺がわざわざお前の会社に行くのか?」
私:「社長、申し訳ございませんが、多数のキャリアアドバイザーの通常業務を止めて
御社のためだけに時間を割きますので、何卒ご了承ください!!
更にもう一つ、説明会の後に一席設けさせていただきます。」
社長:「一席?」
私:「はい。そこにはキャリアアドバイザーのボスも呼びます。
そこでお互いに胸襟開いてお話しいただければ、その後のご紹介もスムーズに行きます。
キャリアアドバイザーは酒好きが多いので、初めに一席設けさせていただければ
自然と御社にご紹介が出ます!!」
実際にこれを実行すると効果は絶大でした。
更に、ゴルフ好きのお客様とは必ず土日にラウンドします。
お客様との距離が大変近くなりますね。
やはり、人材紹介というものは、今も昔も人間が介在するものですので、
仲良くなったお客様に自然と力が入り、結果として多くのご紹介が成立するのも
当り前の話ですね。
非科学的ですが、非科学的なビジネスなので仕方がない。
初めにお客様(求人企業)とキャリアアドバイザーとの関係を良好にしておけば、
お互いが直接コミュニケーションをしてくれて円滑な期待値調整が行われたり、
お客様の選考スピードが早くなったり、我々営業マンが苦し紛れの提案をしなくても、
紹介活動がうまく行きます。
人材紹介コンサルタントとしては、それが良い事とは申しませんが、当時の我々、前金受注を
追う営業マンとしては、紹介活動を促進し、自分は新規の営業活動に専念するための最善とも
言える策でした。
ただ、酒やゴルフ接待で何とかするのも限界があります。
本質的な問題解決にはなりません。
破綻は時間の問題でした。
「トマトがトマトであるかぎり それはほんもの
トマトをメロンに見せようとするから にせものとなる」 みつを
合掌。