今日は、中央支社(神田)時代に、お取引いただいた
ある靴メーカーさんの専務との出会いの話を書きます。
1991年ぐらいかな?
当時、営業ウーマンだったKちゃんに同行して連れていかれたのは、足立区の渋い駅から
徒歩15分ぐらい、住宅街の中にある古い社屋でした。
外階段を二階に上がり、職人さんが靴を作っている作業場を通り抜け、
応接間と言うか事務部屋と言うか、渋い部屋に通されました。
私:「おい、K、お前は俺をこんな金の無さそうな会社に
連れてきやがって、俺の人件費返せ!!」
Kちゃん:「ひどーい!!
そんな事言わないでくださいよー。」
私:「バカヤロー!!
こんなボロボロの会社に人を紹介できると思うか?」
そんな失礼な会話をしていると、色黒でヒゲづら、ジーンズを履いた40代前半ぐらいの男が
入って来ました。
名刺交換したら、この男が専務であることがわかりました。
私:「こりゃダメだ。求人は断って早く帰ろう。」 と思いました。
一応普段通り、会社の現状、求人背景などからヒアリングに入りました。
専務:「うちは見ての通り50人ぐらいの小さな会社だが、いい靴を作ってるつもりだ。
高い靴じゃない。ここにあるような大衆的な靴だけど、デザインや作りのちょっとした
工夫で結構売れるものもある。
この靴を、全国を飛び回って売ってきてくれる営業マンを3人ぐらい欲しい。
営業マンが足りない。」
私:「えー、全国飛び回る!! 出張だらけですか?」
専務:「1ヶ月の半分ぐらいな。」
私:「そりゃ大変ですね。」
専務:「大変なのは靴のサンプルを、大きな箱に入れて持ち歩かなきゃいけないことだ。
サンプルを見せないと靴屋さんは相手にしてくれない。」
私&Kちゃん:「えー!! その箱は何キロあるんですか?」
専務:「靴を入れたら、20キロぐらいだ。」
私&Kちゃん:「えー!! 重いですねー。そんな営業、誰がするんですか?」
専務:「誰がするって、うちの営業マンは全員やってるよ!!」
Kちゃん:「いやー、厳しい営業ですね。これまでは、どうやって営業マンを採用したんですか?」
専務:「これまでは、元暴走族とか俺や社員が知ってる荒くれ者ばかりだ。」
Kちゃん:「えー!! 暴走族ですか? 専務も元暴走族ですか?」
*Kちゃんは、時々このような質問を平気でする人です。
専務:「俺の話はどうでもいいだろ!! あんたたち、人を紹介してくれるんだろ?」
私:「はい。ですが、紹介するには、お金がかかりますよ。」
専務:「幾らだよ?」
私:「一人当たり前金と成功報酬を合わせて80万円ぐらいです。」
専務:「高いなー。三人まとめて頼むから半額にしろ!!」
私:「そんな事できるわけないじゃないですか!! 絶対値引きしません!!」
専務:「兄ちゃん、いい商売だな!!
仕方ねーなー、 じゃあ初めは試しに一人頼む。」
私:「いや、頼まれても紹介できるかわかりませんよ。」
専務:「なにー!! それはどういう意味だ!!」
私:「K、これから条件聞くから、求人票を埋めてくれ。」
私:「専務、前金をいただく以上は、ご紹介できる可能性があるかを確認しなければいけません。
事前に御社の採用条件をお聞かせください。」
専務:「あんた随分偉そうだな。 」
私:「紹介できなければ、御社にご迷惑がかかりますから、宜しくお願い致します。」
こんな感じで、給与や福利厚生など諸条件のヒアリングをしました。
Kちゃん:「専務、お休みは年間で何日ぐらいあるんですか?」
専務:「えー? 計算しないとわからんが・・・・・・・。
うん、だいたい年間70日ぐらいだ。」
私&Kちゃん:「えー!!
そんな少ないの聞いた事ないですよ!!」
専務:「そんな事知らねーよ。中小企業はこれぐらいが当り前だろ!! 」
私:「専務、申し訳ありませんが、年間休日70日ではご紹介できません。
それ以前に労基法違反じゃないですか?」
専務:「なんだ!! 紹介できねーだ!!」
私:「はい。それでは応募者がいませんよ。
専務や社員の方の知り合いなら、その条件でも採用できるかもしれませんが、
月の半分は出張、20キロの靴箱を持ち歩く重労働、おまけに年間休日70日。
普通の人は応募しません!!」
専務:「あんたなー!!
初対面で若造のくせに、
偉そうな事ばかり言いやがって。
それじゃ休みが何日あったら紹介できるんだ!!
言ってみろ!!」
私:「うーん。最低100日です。」
専務:「100日!! うーん・・・・・・。」
私:「宜しくご検討ください。」
こんな感じで帰途に着きました。
私:「K、お前、この会社は絶対に厳しいぞ。下手に受注すると大変だぞ。」
Kちゃん:「そうですねー。私もそう思います。」
それから1週間後か2週間後でしょうか?
Kちゃん:「武谷(たけや)さん、あの専務から電話があって
年間休日を100日にしたそうです!!」
私:「えー!! ほんとか!! 」
Kちゃん:「はい、ちゃんと他の重役も説得して100日に変えたそうです!!」
私:「専務、やるなー!!」
Kちゃん:「ここまでされたら断れませんよ。専務がかわいそうです。」
私:「わかったよ。100日でも大変難しい求人だけど、やるしかねーな。受注して来いよ。」
と、こんな事が起こりました。
まさか、70日を100日にするとは・・・・・・ 。
その後、確か2ヶ月か3ヵ月後、
Kちゃん:「武谷(たけや)さん、あの靴屋さん、決まりました!!」
私:「えー!! ほんとか!! どんな人?」
となり、その後リピートオーダーをいただきました。
それから間もなく、
Kちゃん:「武谷(たけや)さん、また決まりました!!」
となり、数人の方が入社されました。
Kちゃん:「武谷(たけや)さん、今日、専務に聞いたら、皆さん凄い頑張ってるそうですよー!!」
私:「すげーな、あの会社。」
Kちゃん:「暴走族が更生して一生懸命働いている会社ですから
絶対いい会社なんですよ。
きっと専務がいい人だからですよ。」
私:「うん、そうだな。会社を見た目で判断しちゃいかんな。」
Kちゃん:「そうですよー。見た目で判断しすぎですよー。」
私:「すまん。 」
専務、見た目で判断して、誠に申し訳ございませんでした。
「土の中の水道管 高いビルの下の下水 大事なものは表に出ない」 みつを
合掌。