普通、金曜日と言うと明日から休みで嬉しいな、という感じでウキウキしますよね。
ところが、私が新人時代は、1週間の締めの営業会議を金曜日の18時からやっていました。
もちろん、月曜とか火曜日にも毎週の営業会議はありましたが、金曜日の夜にもやるんですよ。
こんな事をやるのは、もちろん、鬼マネージャーのSさん です。
私たちは、 「ビーイング」や「とらばーゆ」、「FromA」などの週刊の求人媒体も売っていましたので、
毎週の週目標(受注目標)というのがあったんですよ。
例えば、新人なら週目標100万円で月間目標400万円とか。
これがリーダークラスになると、週目標500万円で月間目標2000万円とかになるわけです。
こんな高い目標、どうやって達成します?
金曜日の締めの営業会議の目的は二つでした。
1 週目標達成者を誉めたたえる。一方で、達成できなかった奴をボロクソに詰める。
2 成功事例の共有
今日は、上記1の恐ろしい方の話を書きます。
当時、このグループには15人程度の営業マン&営業ウーマンが居ました。
その内、正社員はわずか5人程度でした。
正社員は、次長のIさん、鬼マネージャー 、私、後輩の新人2人で合計5人。
じゃあ、他の10人は何か?
できるツワモノ営業マンは、GA(月給制アルバイターの略)になります。これが3人。
GAは、正社員に昇格する可能性のある予備軍であり、営業力は私のような軟弱な社員を
はるかにしのぐ事実上のリーダー格です。
他の営業マンは、A職(日給月給アルバイト)です。これが7人です。
A職の営業マンの実力もなかなかで、全員頭もフットワークも良いので、我々駆け出し正社員の
良きライバルです。
鬼マネージャーのSさん は、このアルバイトの営業マンの採用にも妥協を許さず、
A職一人採用するために200万円以上かけていました。
取締役営業部長のMさんから、
Mさん:「S、お前、アルバイトの採用にお金をかけ過ぎだ!!」
とか怒られていましたが、
Sさん:「何言ってるんですか!!
売れないとわかっている人間を採用したら、
お互いに不幸じゃないですか!!
採用で商売している会社が採用で金をけちってどうするんですか!!」
という具合で全く聞き入れず、どんどん求人広告で応募者を集めて、社員以上の能力を持った
A職(アルバイト営業マン)を採用するんです。
*当時、アルバイトでも高給で、平均的な会社の営業マン以上に稼げたので、
良い人材が採用できたのです。
できるA職(アルバイト営業マン)の存在は、我々正社員営業マンとしては大変なプレッシャーでした。
鬼マネージャーのSさん は、
Sさん:「お前らアルバイトより売れなかったら正社員の資格は無い。
そんな能力が無い奴は早く辞めろ!!
給料泥棒!!」
というのが口癖です。
特に、入社2年目ながら正社員の営業マンとしては最年長だった私は、たまったもんじゃありません。
実際に金曜日の締めの営業会議で、厳しく詰められるターゲットになるのは私です。
ボードに営業マンの名前を、大きな売上目標を持っている実力者から順番に書いていきます。
そして、上位者から順番に今週の目標と目標達成率を発表します。
Sさん:「じゃあ、最初にM君(GAの親玉)、今週はどうだった?」
Mさん:「週目標500万円に対して、実績600万円で達成率120%です。」
*パチパチパチと全員が拍手。
Sさん:「さすが安定してるね。今月の見込みは?」
Mさん:「T社で大型受注のヨミがあって、今日、先方でも内々で決済がおりたみたいですから、
問題ないでしょう。」
Sさん:「OK。さすがだよな。M君の営業はきめ細かいからね。お客さんを掴んだら放さないからね。
みんな、M君に極意を教えてもらった方がいいよ。」
Sさん:「じゃあ次、栢野(かやの)は?」
栢野(かやの)さん:「えー、目標400万円に対して、実績500万円。達成率125%」
*パチパチパチと全員が拍手。
Sさん:「さすが!! いつも渋いね。ちゃんと帳尻合わせるね。何か秘訣あるの?」
栢野(かやの)さん:「いやー特に無いですね。普通に営業しているだけです。」
Sさん:「さすが!! いつも高倉健みたいに見ざる、聞かざる、言わざる!! 渋いね。
みんな、栢野(かやの)は聞いても言わないから、営業同行させてもらって極意を
盗むしかないぞ。」
こんな感じで、ツワモノ営業マンの景気の良い話が続き、いよいよ私に回って来ます。
Sさん:「それじゃあ、次は武谷(たけや)だな?」
私:「はい。目標250万円に対して実績150万円。達成率60%です~。」
Sさん:「お前さ、毎週毎週困るんだよね!!
お前、俺の給料下げる気か!!
お前がショートした100万円どうするんだよ?
M君や栢野(かやの)にカバーしてもらうのか?
お前、正社員のくせにそれで平気なのかよ!!」
私:「いや、平気じゃないです~。」
Sさん:「今月の見込みは?」
私:「C社にプレゼンした企画が通れば、最終週に取り戻せます。」
Sさん:「通れば? もうそんなタラレバの話は聞き飽きたぜ!!
お前、M君や栢野(かやの)から、ちゃんと極意を盗んで行動を変えているのか?」
私:「変えているつもりです~。」
Sさん:「本当に変えていたら結果も変わるはずだ!! 本気で変える気が無いなら辞めろ!!」
まあ、毎週金曜日の夜にこんな会議です。
悔しいやら、悲しいやら、本当に腹が立つ。
しかし、売れないのは自分の力不足だから、自分が成長するしかありません。
1週間働いた金曜日の夜が、こんな最悪なカタチで終わるわけですから、
当然この会議の後はヤケ酒です。
ただ、今考えれば、この悔しさがその後の原動力になったのかもしれません。
合掌。