お宅はどんな「そばや」ですか?
先日、 「探客力が勝負」 という話を書いたが、今日はちょっと角度を変えた話だ。
以前は、待ってりゃ求人は来る、登録者も来た。
それをマッチングすれば決まった旧き良き時代を忘れろ、というのは厳しいが、
いい加減にその思い出と決別しないと二度と良い時代は訪れない。
景気が戻っても駄目だ。
以前より競争が厳しいので、1社当りの分配が少なくなる。
1997年は全国で300事業所しかなかった同業者が、2008年に15000事業所となり、競争は50倍となった。
ただ、事業撤退・廃業・倒産相次ぎ、実際にまともに人材紹介をやっているのは40%程度だろう。
従って、リアルな事業所数は6000事業所で、1997年対比で競争は20倍だ。
それに対して、1997年の市場規模は450億円、2008年の市場規模は2600億円と約6倍程度。
更に2009年の市場規模は概ね40%減として1500億円と仮定した場合、1997年対比でわずか3倍。
市場規模は3倍なのに、競争は20倍になっている。
この数字、マーケット感覚が鋭い人なら、何となく 「そんなもんかなー。」 と思うでしょう。
とにかく昔と比べると決まらなくなった、おいしい仕事じゃなくなった、と思っているはず。
日本という国は発明は苦手だが、発明されたものを理解すれば、応用して発展させるのは得意だ。
ある程度の所までは、あっという間に欧米先進国に近づく。そこから先が問題だが。
日本は業務の効率化や標準化、もっと言えば工業化に長けている。
その際たるものが、大手人材派遣会社、並びに、大手人材紹介会社だ。
40年以上前に日本に人材派遣業を持ち込み首位だったマンパワー・ジャパンは、今やその勢いはない。
スタッフサービス、テンプスタッフ、パソナなど、後発の日本企業に抜き去られた。
アデコの前身は大半が旧キャリアスタッフなので、外資とは言え基礎になっているのは日本企業だ。
しかし、今回の不況で日本企業の工業化技術の限界も露呈した。
単純な効率化や標準化では、顧客の欲求を満たせない。
昔から満たせていなかったが、それでも儲かるので放置したツケが回って来た。
顧客は、もっと多様な、もっと上質な、もっと個別のサービスを求めている。
派遣業や紹介業が目新しい時期は、量とスピードの勝負だった。
しかし、目新しさがなくなり、顧客の目が肥えた今は厳しい。
東京の「そばや」 を見てほしい。
金持ちが昼間から何千円も払って日本酒を飲みながら2時間ぐらいだらだら食っている高級そばや、
一方で貧乏暇なしサラリーマンが300円のそばを3分でかきこむ 「小諸そば」 のような立ち食いそばや。
その中間ぐらいのそばや。
意外につぶれていない。
それぞれが自店のファンを持っている。
我々の業界もこのようになっていく。
先日、街中を歩きながら飲食業界の達人社長に聞いた。
私:「社長、歩きながら店を眺めただけで繁盛店か、流行らない店か、わかりますか?」
社長:「うん、わかりますよ。」
私:「ほー、まずは何がポイントですか?」
社長:「まずは外から見て、何屋なのか? はっきりわかることが第一の条件です。
何屋かわからない店に、初めての人は普通入りませんよね。」
私:「なるほどー、確かに。」
我々は、自分の会社がどんな「そばや」なのか?
はっきりさせる時が来ています。
欲張って全ての顧客を取り込もうとすると、沈み行く大手外食チェーンのようになるでしょう。
「梅の木に梅の実 柿の木に柿の実 それでよいのです」 みつを
合掌。
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