昔、日本橋からビルを飛び込みながら浜町まで歩いて来て、夕方になってしまった。
「あーくっそー、今日もこれと言った収穫がなかったか!!」
と思ったが、最後にダメモトで1社大きそうな会社に飛び込んだ。
「東京支社と書かれているので、本社は別の場所にあるのか?
ということは、ここには決裁権がある人がいないのか?
まあいい。とにかく入ろう!!」
うわー、広いフロアーに営業マンが50人ぐらいいて、ざわざわ電話したり会話したり、活気があるというか
雑然とした男臭い空気ムンムンだ!!
「この会社、でかそうだが、一体何を売ってる会社なんだ?」 と思いながら営業フロアーの入口で
誰に声をかけていいかもわからず周囲を見回していた。
そうしたら、一番奥にやたら強面(こわもて)で 恰幅のいいオヤジがいて、こっちをにらみつけている。
「おー、やばいぞこれは。追い出されるかもしれないな。」 と思い一瞬ひるんだ。
ただ、お互いの視線は合ったままだ。
そうすると、何やらオヤジが動き始めた。
電話しながら私の顔をにらみつけ、手で 「こっちへ来い。こっちへ来い。」 と呼んでいる。
「なんだこりゃ? どういう展開になるんだ?」 と思いながら、多くの営業マンの間をすり抜けて
一番奥のオヤジの机の前に行った。
オヤジ:「おい、お前は何やってるんだ?」
私:「飛び込み営業です。」
オヤジ:「何を売っているんだ?」
私:「求人広告です。B-ing、ご存知ですか?」
オヤジ:「なんだそれ?」
私:「新聞広告の10分の一の値段で、首都圏の転職希望者10万人に見てもらえますよ。」
オヤジ:「そんなものがあるのか?
ちょっと別の部屋で話を聞こう。」
その後、応接に通されて、オヤジに会社の話を聞いた。
名古屋本社の準大手OA機器商社の東京支社だった。
オヤジは東京支社長。
OA機器の商社で長年務めれば、これぐらい恐ろしい顔 になるだろう。
顔は強面だが、支社長も営業で苦労した人なので、飛び込んで来た私の気持ちがわかるのだろう。
話してみると大変人間味のある暖かい人柄だ。
最近、東京での営業強化が課題らしく、営業マンを複数採用したいらしい。
オヤジ(以下、支社長):「お前の営業は飛び込み専門か?」
私:「いや、専門じゃないですが、電話でアポが取れない日は飛び込むしかないです。」
支社長:「そうか感心だな。
しかし、お前はどうして自分の商品説明をしないんだ?」
私:「いや、先に御社の魅力とか特色を聞いて、それを大きな紙面を使って読者に訴えたいんです。」
支社長:「どれぐらいの紙面が必要なんだ?」
私:「今のお話からすると最低2ページです。」
支社長:「わかった、ちょっと待て。今、専務を呼んでくる。」
私:「なにー、専務も東京支社にいるのか? ラッキー!!」
支社長:「おい、うちの専務だ。」
私:「お世話になります。
武谷(たけや)と申します。」
専務:「うん。今日はどうした?」
支社長:「営業マンの採用の件ですが、新聞広告じゃなくて、このB-ingとか言う雑誌に出した方が
応募者が集まると言うわけです。」
専務:「なぜ新聞より集まるんだ?」
私:「大きく二つ理由があります。
一つは、新聞の読者の中で転職を真剣に考えている人は少ないですが、
このB-ingは、毎週首都圏10万人以上の転職希望者が自分で買って読んでいます。
転職に対する真剣さが違います。
もう一つは、新聞の紙面には限りがあります。朝日や読売の3段二分の一サイズの東京本社版でも
これっぽっちの大きさで広告料金は300万円以上です。それも日曜日だけしか掲載されません。
B-ingは見開き2ページという大きな紙面に御社の魅力や求める人物像を書けますし、
1週間も店頭に並び、購入後もすぐに捨てる人は少ないですから、応募効果が長続きします。」
専務:「ふーん、過去に実績はあるのか?」
私:「では、具体例をお見せします。」 と言って、他社事例を見せながら説明した。
支社長:「それで値段は幾らだ?」
私:「モノクロ2ページだと約100万円、巻頭カラー2ページだと約200万円です。」
支社長:「カラーはモノクロの2倍か?」
私:「支社長、雑誌はどこから読みますか?」
支社長:「そりゃ前から読むな。」
私:「そうですよね。
そして、これだけ分厚い雑誌ですから、後のページにたどり着くのは大変です。
見た目もカラーとモノクロでは全然違いますから、応募者の数だけではなく質も違ってきます。」
支社長:「専務、どうしますか?」
専務:「ふーん、200万円かー。
5人ぐらい採用できるか?」
私:「できます。」
専務:「・・・・・・・。よし、わかった。
支社長、総務課長も呼んで来て。
それじゃあとは課長と進めてくれ。」
私:「ありがとうございます。」
いやー、1年に1回ぐらい、こんなラッキーもあるので何とかやってられる。
その後、このクライアントは、1回目の採用で成功し何度もリピートしていただいた。
更に、その後、全国拠点間の電話回線もリクルートが当時再販していたデジタル回線に切り替えて
いただいた。
全ては、鬼のような顔だが 暖かい人柄の東京支社長との出逢いから始まった。
営業はドラマだ。
「そのときの出逢いが 人生を根底から変えることがある よき出逢いを」 みつを
合掌。
※弊社HP↓。