上場を目指す会社は無数にあるが、実際にできる会社は大変少ない。
JACジャパンの主幹事証券会社は、天下の野村證券。
野村證券は最大手なので、そう簡単に主幹事は引き受けてくれない。
しかし、野村證券が主幹事だという理由で株価も上がるらしい。
その野村證券がJACジャパンの主幹事を引き受けてくれたのは、オーナーが ロンドンで
野村證券の偉い人と親交があったからだ。
野村證券のIPO支援部隊も、業界別に編成されているらしく、JACジャパンを担当してくれた人も
人材派遣や人材紹介の業界を担当していた。
彼らは、ほぼ毎月のように、業績や組織体制の整備具合などをチェックするために来社していた。
こちらの対応が、ちんたらしていると渋い顔 になったりする。
しかし、彼らの顔がほころんだ 時が二回あったのを覚えている。
一回は、新卒採用に踏み切る方針を伝えた時だ。
彼らは、当時のJACのコンサルタントの定着率が良くなかった事を懸念していたので、
「今後は、新卒採用を継続的に行い、組織基盤を着実に固めます。
会社の方針に共感してくれる素直な新卒を一から教育して戦略化し定着率を高めます。
急がば回れですよね?」
と、私が言った時に、安堵したように深くうなづいていた。
もう一回は、CFO(副社長)として、服部さんが入社された時だ。
服部さんの過去の経歴や初対面でのやり取りから、
「いやー、あんな優秀な方を、よくスカウトできましたね。
本当に良かったですね。
私たちも心強いです。」
と笑顔で言ってました。
やっぱり、IPOするには、立派なCFOが居ないと話にならないですよね。
この二つの事があってから、野村證券もちょっと本気モードに入って来たと思いました。
しかし、「ちょっと何とかならないの?」 と思った事が一件あります。
ホテルオークラの大広間で、その年に野村證券が主幹事を務めて上場した企業と、上場予備軍企業の
社長やCFOを招待したパーティーに、服部さんと二人で出席した時の事です。
当時の野村證券の氏家社長も含めて、何百人も来ていました。
さすがに豪勢なパーティーで、鮨の名店「久兵衛」 の職人も来て、バンバン鮨を握っていました。
「久兵衛」の前には行列ができていました。
我々貧乏人は、「久兵衛」 なんか行けませんからね。
しかし、横を見るともう一つの行列ができていました。
そして、その行列の最上座には、氏家社長がドーンと立っていました。
並んでいるのは、氏家社長に直接挨拶したい、名刺交換したいという上場予備軍企業の経営者たち。
「なんで並んでまで、氏家社長に頭を下げないといけないの?
一体、どっちが客なんだよ!!
氏家社長が、自分で歩き回って名刺を配り、挨拶すべきじゃないの?」
と、率直に思いましたが、
「折角の機会のなので、氏家とご歓談ください。」
と、野村證券の担当者に促されて、渋々行列に並びました。
一社当り3分として、20社並べば1時間も並ぶわけですよ。
私:「仕方がないから、鮨でも食いながら待ってましょうか?
でも、鮨は人気で食べられそうもないですね?」
服部さん:「私が取って来ますよ!!」
私:「そんな、服部さんに取りに行っていただくなんて結構ですよ。」
服部さん:「大丈夫です。
少々お待ちください。
大好きな何ならお酒も持ってきましょうか?」
私:「いやいや、本当に大丈夫です。」
服部さん:「少々お待ちください。
すぐに取ってきますので。」
本当にリクルートの大先輩で、新人研修のトレーナーだった服部さんに、鮨 や酒 を
取りに行っていただくなど恐縮してしまうんですよ。 p>
服部さんは、大変気が利くし、フットワークも良いので、すぐに鮨 と酒 をGETして
戻って来られました。
そんなこんなで飲み食いしながら並んでいると、やっと我々が氏家社長に挨拶する順番が来ました。
何を話したか明確には覚えていませんが、氏家社長も確か国際畑出身だったので、
「JACは、国際人のオーナーがイギリスで創業した会社で、それが逆輸入のようなカタチで
日本に戻って来て上場を目指しているという、大変特色がある会社なんです。」
というような事を話したと思います。
氏家社長は、もう何十社も相手にしているので、
「ほー」 とか、「へー」 とか、そんな適当なリアクションだったと思います。
「これは本当に上場間際にならなければ、野村證券にとっては、ただの見込み客リストの一社に
すぎないんだな。」
と苦笑した次第です。
それにしても、なんでこっちが並ばんとあかんのや!!
どっちが客やねん!!
会社が大きかろうが小さかろうが、社長は社長じゃ!!
合掌。
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