昨日の続きです。
皆さん、誤解しないでくださいね。
当時のご年輩のキャリアアドバイザーの方々が悪い、さぼっていた等と糾弾する
つもりは毛頭ありません。
皆さん、お年の割には頑張っていたし、知識・人生経験も豊富で、多くの事も
お教えいただきました。
だから、今でも時々お会いすれば、楽しく酒も飲めます。
ただ、我々、求人開拓の営業マンの部門と、キャリアアドバイザーの部門が分かれており、
それぞれに別の責任者(取締役)が居た為、会社として同じ軸でマネジメントが
されてなかった。
そのため、営業サイドから幾らキャリアアドバイザーをプッシュしても限界があったわけです。
両方の部門をしっかり同じ軸で回るようにするリーダーシップが欠如していたわけです。
これは、経営の問題です。
しかし、私は経営に風穴を空けるというような格好良い大義があって、上記二つの部門の
境界線を越えたわけではありません。
ただ、大変お世話になっている目前のお客様の、切なるご要望に応えたかっただけです。
前置きはこれぐらいにしましょう。
私:「もうキャリアアドバイザーには任せられん!! 自分でやるしかない!!」
と思い、登録者のエントリーシート80名分を自宅に持ち帰り、深夜、自分で電話をかけ、
徹底的にフォローすることを決心しました。
当然、ダマテンですよ。
*当時、営業マンがそのような事をするのは絶対禁止の時代でした。
そこへ、当時の直属マネージャー(天才営業マネージャー)のNさんがやってきました。
Nさん:「武谷(たけや)、ついに自分でやる気だろう?? やれやれ!!
ほら、俺もこっそり郵送登録部門の建築系人材リストを100人ぐらいコピーしてきた。
こんなに優秀な人材が埋もれているぞ。もったいない。
これも一緒にフォローしろ!!」
と、さすが、鼻が利く天才営業マネージャー、私の事はお見通しで、新しい人材リストも
探し出して持って来てくれました。
私:「ありがとうございます!! 何だ!! こんなに居るんじゃないですか!!
これだけ貴重なリストが、今頃出てくるなんて嬉しいけど悔しいですね。
もっと早く俺の手元にあったら・・・・・。」
Nさん:「武谷(たけや)、これ、やばいからな。ばれないように上手にやれよ。」
私:「もちろんです。ありがとうございます。」
この日の深夜から、早速、自宅でのエントリー者フォローの電話かけが始まりました。
当時の、建築設計や施工管理の人たちの帰宅時間は遅かったです。
22時に電話しても、だいたいお母様か奥様が電話に出られる。
私:「夜分遅く済みません。リクルートの武谷(たけや)と申しますが、ご主人様はいらっしゃいますか?」
奥様:「済みませんが、まだ帰ってないんですよ。最近は遅いから、だいたい12時ぐらいです。」
私:「誠に申し訳ございませんが、その時間にお電話してもよろしいでしょうか?」
奥様:「逆に、そんな遅くお電話いただいてもいいんですか?」
私:「恐縮ですが、是非、ご主人様とお話ししたいので、宜しくお願い致します。」
こんな感じで、実際のゴールデンタイムは、23時から午前1時の間でした。
今度は、実際にご本人に電話がつながるとこんな感じです。
私:「A様ですか? こんな夜分遅く、また、大変お疲れのところ、申し訳ございません。」
Aさん:「あー、先ほど家内から聞きました。」
私:「二ヶ月前に、当社の郵送登録部にご登録いただき、誠にありがとうございました。
今日は、A様のその後の状況確認のお電話です。
確か、その時にB社と言う会社を1社ご紹介して以来、ご無沙汰しておりまして、
申し訳ございません。
その後の転職活動に関しては、何か変化はございますか?」
Aさん:「いやー、何分忙しいもので、今は何も動きはありません。」
私:「毎晩、こんな遅くまでお仕事では、転職活動される余裕もありませんよね。」
Aさん:「そうなんですよ。別にその気が無くなったわけじゃないんですけど。」
私:「そうですよね。良い求人さえあれば、相変わらずお気持ちはあるわけですよね?」
Aさん:「何かありますか?」
私:「はい。実は、一部上場企業の住宅事業部門直轄の戦略子会社での求人なのですが、
S社と言う会社はご存知ですか?」
Aさん:「あー、最近、時々耳
にするようになりましたね。伸びてるみたいですね。」
私:「実は、その会社の社長から直々に、Aさんのような人材をスカウトしてほしい
というお話がありました。
是非、一度、会社見学に行かれてみませんか?
Sさんと言う総務課長宛に訪問していただければ、詳しく会社説明をしていただけます。
その上で、ご興味があれば、是非、ご応募されてみてください。
そうでない場合は、ご応募いただかなくても結構ですので、お気軽にお訪ねください。」
こんな感じで、毎日深夜に怪しい電話をかけまくっていました。
200人程度のリストを1回クリーニングし、つかまらなかった方々に2回目の電話をかけようと
していた頃でした。
突然、Cさんと言う登録者の方が、直接、新橋本社のキャリアアドバイザーYさん宛に来社されました。
*Cさんは、以前、キャリアアドバイザーのYさんと、一度面談されていた方でした。
Yさん:「今日は、どうしたの? 新しい求人の情報収集ですか?」
Cさん:「はい。それもありますが、先日の深夜に、御社の武谷(たけや)さんと言う方から電話が
あって、『とにかく一度、S社と言う会社を訪問してみてほしい。』と言われたんですが、
Yさんは、その事をご存知ですか?」
Yさん:「いいや?? そんな事は全く知らないよ。Cさんの担当は私だけだから、他の人間から
連絡が行くわけがない。」
Cさん:「でも、武谷(たけや)さんと言う方から電話があったんです。
御社には、そんな名前の人は居ないんですか?」
Yさん:「いや。、居るには居るが・・・・・。どうしてかなー?
まあ、こちらで調べて、後日連絡しますよ。」
という事が起こり、私がやっていた事が、あっと言う間に上層部にバレバレになりました!!
翌日の早朝、本社から常務と営業部長が、当時、新宿支社に異動していた私と、
鬼マネージャーSさんの所に飛んで来ました。
そこで、鬼マネージャーSさんが、まず呼ばれました。
常務&営業部長:「お前も知っての上で、武谷(たけや)にやらせていたのか?」
Sさん:「そうです。」
常務&営業部長:「バカヤロー!! キャリアアドバイザー部門は役員以下、全員カンカンだ!!」
Sさん:「済みません。」
常務&営業部長:「Nもお前も、どうして事前に俺たちに承認を取らないんだ!!
これで、武谷(たけや)の将来に傷が着いたら、お前たちは責任取れるのか!!」
Sさん:「じゃあ、承認を取ったら、やらせてくれたんですか?」
常務&営業部長:「それはわからん。」
Sさん:「そうでしょう? だから、黙ってやるしかなかったです。」
常務&営業部長:「バカヤロー!! だから、承認を取らないでよい、という話にはならん!!
とにかく、新橋のキャリアアドバイザー部門に武谷(たけや)を行かせて、
全員に頭を下げるように指示しろ!!
そうしないと、今後、武谷(たけや)の求人には、一人も紹介を出さないと
言っているぞ!!」
Sさん:「わかりました。」
私もその後、営業部長のHさんに呼ばれました。
Hさん:「武谷(たけや)、すぐに新橋に行って、全員に頭を下げて来い。
気持ちはわかるが、次回からは事前に承認を取ってくれないと、
俺もお前をかばえなくなる。
今、お前は大事な時なんだ。
いいな!!」
と、拍子抜けするぐらい、穏やかに言われました。
H部長は、部門長としてのご自身の責任を痛感されていたのでしょう。
その後、私は指示通りに新橋本社に飛んで行き、全キャリアアドバイザーに頭を下げて
回りました。
「お前、こんな事したら、お前の会社には、二度と人を紹介せんぞ!!」
と、親玉のキャリアアドバイザーに強く叱責されました。
他のキャリアアドバイザーも、私が頭を下げても、冷たい感じのそっけない対応でした。
確かに、それ以来、1ヶ月間ぐらいは、従来より紹介人数が減少しました。
上層部では、公に、上司や私を処分するという話もあったようです。
しかし、常務やH部長、マネージャーのNさん、Sさんには、ご迷惑をおかけしましたが、
私はこの件に関して、悪い事をしたとは思っておりません。
営業マンとして、当然の努力をしただけだと思っております。
ただ、お客様のご要望に、会社の体制や仕組、役割分担などが、着いていけなかったのだと
思っております。
その結果、バブル崩壊と同時に、3年連続赤字転落、従業員450人から150人への
大リストラをやらなければならなくなったのだと思っています。
さて、私の深夜の電話での成果はあったのか?
お一人ですが、素晴らしい方が、S社にご入社されました。
入社されてすぐに、事業所代表の1級建築士に登録されていました。
総務課長:「今回は、いろいろ危ない橋を渡らせてしまったらしいね。」
私:「いや、御社には、それだけお世話になっていますので。」
この事件が、1月か2月だったのですが、3月末に常務、H部長を通じて、
鬼マネージャーのSさんに電話で連絡がありました。
Sさん:「そうですか!! ありがとうございます!!」
がちゃ!!(と電話を切るなり)
Sさん:「おい、武谷(たけや)が、4月からマネージャーに昇進するぞ!!
良かったなー。おめでとう!!」
私:ポカーン~。
*マネージャー昇進など夢にも考えた事がありませんでした。
30歳ぐらいになったら、なるものなのかなー。ぐらいに考えていました。
私の同期300人(昭和59年組)はインフレでした。
早い人は、私よりも半年早く昇進していました。
ただ、当時のリクルート人材センターでは、26歳でマネージャーというのは
前例がありませんでした。
私の後輩では、私より早く昇進する人が出てきましたが。
私:「そうか、それで、H部長は、『今はお前にとって大事な時だ。』と言っていたのか!!」
上司の心、部下知らずなのかもしれません。
あんな大事件になったのに、よく昇進できたものだと、会社の寛容さに感謝しました。
その後、4月の人事が発表されました。
私は、てっきり、営業部隊のマネージャーになるものだと思い込んでいましたが、
配属先は、キャリアアドバイザーの郵送登録部門でした。
そう言えば、あの事件の後、H部長がおっしゃっていました。
H部長:「お前は、キャリアアドバイザー部門に対して問題意識があるのか?」
このような経緯で、入社時の目標だったキャリアアドバイザーになることになりましたが、
その後は、自分の思い通りにならない日々が続きました。
*これは、20年以上も前の話です。
現在のリクルートエージェントでは、全く異なる料金体系、組織、役割分担で運営されています。
合掌。
※弊社HP↓。