昨日の続きです。
いよいよ事件が起こります。
以前、栢野(かやの)さんと営業同行して、過剰営業で警察に連行された営業マンAさん が、
再度登場します。
このAさんも、大変アグレッシブな営業マン(苦労人)で、大変勉強になる方でした。
アポ取りトークで、「それでは、早速お詫びに伺います。」を発明したのもAさんです。
そのAさんが、何ヶ月も通い続けていた見込み客がありました。
大手電器メーカー系のサービス会社で、T社と言う会社でした。
Aさんは、ここ数ヶ月で何度も通い、様々な情報提供を、相手の人事部長さんに行っており、
大きな信頼を得ていました。
人事部長:「いつも、いろいろな資料を持って来てくれて、ありがとう。」
Aさん:「いいえ、これが私の仕事です。
でも一応、私も営業なので、中途採用される時は、是非、ご発注お願いします!!」
人事部長:「もちろんだよ。やる時は必ずA君に連絡するから、よろしく頼むよ。」
このような感じで、AさんがT社から受注するのは時間の問題でした。
それから、1ヵ月後に、Aさんは、再びT社を訪問しました。
Aさん:「どうもお世話になっております。今日も新しい資料をお持ちしました!!」
人事部長:「あー、いつもありがとう。
ところで、赤坂営業所から、君に連絡は行っているよね?」
Aさん:「え!! それはどういう意味ですか?」
人事部長:「えー? 聞いてないの??」
Aさん:「何をですか?」
人事部長:「2週間前にやっとエンジニアの中途採用の話が社内で決済されたんだよ。
丁度そのタイミングで、お宅の赤坂営業所の所長さんと営業のHさんが来られて、
求人広告を2ページで発注したんだよ。」
Aさん:「えー!! それは一体どういう事ですか!!」
人事部長:「い、いや、私もお願いするのは、君と決めていたから、赤坂の所長さんに
言ったんだよ。A君に発注するつもりだと。
ところが、赤坂の所長さんが、
『部長、ご心配には及びません。同じ社内の話ですから、A君とは私が調整しておきます。』
と言ったんだよ。
私も営業所長の言葉を信じて、ちゃんと君の成績にもなるものだと思って、
赤坂に発注したんだよ。」
Aさん:「どういう事ですか!! 私には電話1本すら、赤坂営業所からの連絡はありませんよ!!」
人事部長:「そうなのか? それは本当に申し訳ない事をした。
発注前に君に確認の連絡すれば良かった。」
Aさん:「いや、部長、私も取り乱してしまい申し訳ございません。悪いのは、こちらです。
リクルート社内の問題です。済みません。」
人事部長:「私に何かできる事はあるか?」
Aさん:「お手数ですが、赤坂営業所へのご発注をキャンセルしていただき、
あらためて、私に正式にご発注いただけないでしょうか?」
人事部長:「うーん。もちろん、私の気持ちとしては、そうしたいところだ。
でもね、既に当社のエンジニアに取材もしてもらって、原稿も完成しているんだよ。」
Aさん:「えー!! そんなに早く原稿制作の手配をするなんて、通常のスケジュールに比べると
早すぎます!! やっぱり、私が来ない内に特急で原稿を作ったんだ!!
何と卑劣なやり方だ!!
部長、今回の件は、私は絶対に引き下がれません!!」
人事部長:「うん。君が怒る気持ちはよくわかる。でもね、既に原稿チェックも終えているんだよ。
だから、A君、同じ原稿で掲載できるなら、君にお願いするよ。」
Aさん:「わかりました。どんな原稿か拝見できますか?」
皆さん、こんなバカな話がありますか!!
客観的に見ると、同じ社内で、こんなくだらないバッティングをやって、結局はお客様にご迷惑を
おかけするわけです。
それにしても、この赤坂営業所長の野郎、チンチンを切り落としたくなりますね。
このうそつき野郎!!
さあ、Aさんは、帰社後、すぐに、「出世を捨てた男、反骨の現場主義者 I次長」 に、
この件を報告しました。
Iさん:「許せねー。俺は絶対に許せねー。このままではすませねーぞ。」
と、Aさんの話を聞きながら、普段は仏様のようなIさんの顔色がどんどん変わって行きます。
Iさん:「おい、A君、今から赤坂営業所に行くぞ!!」
Aさん:「いきなりですか??」
Iさん:「当り前だろー!! お前は悔しくないのか!! 俺は絶対に許せねー。」
Aさん:「くやしいでーす!!」
Iさん:「早く行くぞ!!」
もう誰にも止められません。
I次長とAさんは、1キロ程度しか離れていない赤坂営業所に殴りこみました!!
赤坂営業所の入口で。
Iさん:「RJC(リクルート人材センターの略)のIだ。
所長のNは居るか? 」
女性アシスタント:「お約束ですか?」
Iさん:「悪いけど急いでいるんだよ。とにかく呼んできて。」
間もなく、N所長現る。
Nさん:「いやー、Iさん、ご無沙汰です。お元気ですか?」
Iさん:「どうでもいいから、空いている会議室はないのか?」
Nさん:「何だか穏やかじゃないなー。こちらへどうぞ。」
以下、会議室での会話。
Nさん:「どうしたんですか?」
Iさん:「お前の胸に聞いてみろ!!」
Nさん:「何ですか? 突然。」
Iさん:「お前、T社から受注したそうだな?
その時に、相手の人事部長に、ここに居るA君とは社内で調整しておきますと
言ったそうだな?
それで、お前は、このA君にちゃんと連絡したのか!!」
Nさん:「あー、T社の件ですか?
あれは、営業のHが、求人ニーズを掴んできたので、普通に営業同行して
クロージングしただけです。
普通の営業じゃないですか?」
Iさん:「先方の人事部長は、やる時はA君に発注すると約束していたんだぞ!!
だから、お前も社内で調整するから心配するなと約束したんだろう!!
でも、実際にはお前は、A君に電話1本しなかった。
お前は、営業所長と言う責任ある立場に居ながら、お客様にウソをついた。
そんなウソまでついて、人の成績を奪いたいか、 このバカヤロー!!」
Nさん:「奪ったり、奪われたり、よくある話でしょう?
A君も、もっと頻繁に通っていたら、受注できたはずでしょう?
お互い様じゃないですか?」
Iさん:「お前は、仁義を切るということを知らないのか?
お前から見たら、Hという子も、ここにいるA君も、広い意味では同じ後輩であり、
かわいい部下じゃないか?
お前は、お客様に対しては、管理職として、リクルート全体の代表として
恥ずかしくない行動を取るべきだろう!!
それなのに、自分の営業所の利益だけを考えやがって、
お前、すぐに会社を辞めろ!!」
こんな感じで、赤坂営業所長には、ボロクソに言いましたが、
話は暗礁に乗り上げ平行線でした。
そこで、ついにAさんが決心し動きました。
Aさんは、本社に忍び込み、既に入稿済みで制作進行部門で保管されていたT社の原稿を
盗み出して来ました!!
そして、その原稿を、T社の人事部長との約束通り、あらためて入稿し直しました。
もちろん、T社の人事部長は、赤坂営業所への発注はキャンセルし、Aさんに発注し直したのです。