さあ、いよいよカリスマ営業マン、栢野(かやの)さんとの営業同行初日の出来事です。
栢野(かやの)さん:「そうだなー、今日は本郷でも行くか? 中小の医療機器商社がたくさんあるから、数多く回れるだろう。」
その後、地下鉄、本郷三丁目の駅に着くなり、ホームで営業カバンをカーリングのストーンのように エスカレター目掛けて投げて周囲の乗客を驚かす。
地上に出たら、獣のような眼光になる。
栢野(かやの)さん:「毎日歩いていると会社の看板を見ただけで、その会社の儲かり具合がわかるんだ。」
私:「そうですね。 確かにきれいな看板を見ると儲かっている会社みたいですよね?」
栢野(かやの)さん:「看板がきれいだからいいというものじゃないけどね。 よーし、この辺から飛び込んでみるか!!」
自社ビルらしき、7階か8階建ての結構きれいなビルです。 1Fのドアを開けると受付さんが居ました。
栢野(かやの)さん:「どうも、栢野(かやの)です。社長、お願いします!!」
受付さん:「お世話になります。本日はお約束ですか」
栢野(かやの)さん:「いやー、今日はたまたま約束していませんが、宜しくお願いします。」
受付さん:「少々お待ちください。社長に聞いてみます。」
受付さん、社長に電話で都合を聞いている模様。
受付さん:「申し訳ございません。社長は、アポイントが無いとお会いできないと申しております。」
栢野(かやの)さん:「そうですか? わかりました。では、またあらためて。」 と言いながら、あきらめて帰るふりをして、「5階 社長室」の案内板を見て、受付さんの死角で エレベーターの上りボタンを押した!!
そして、エレベーターに乗るなり、社長室がある5階のボタンを押した!!
私:「大丈夫なんですか?」
栢野(かやの)さん:「そんなん関係ない、関係ない。」
そして、社長室がある5階に着くなり、迷わず社長室のドアをノックした!!
ドアは開いた!!
栢野(かやの)さん:「どうも社長、栢野(かやの)です!!」
社長:「き、君ー!! 受付で今日は会わんと断っただろう!!」
栢野(かやの)さん:「いや、5分で結構です。」
社長:「駄目だ、帰れ!!」
栢野(かやの)さん:「そうですか? わかりました。帰ります。」
と言うなり、何と足でドアを閉めた!!
私は、その日が栢野(かやの)さんとの初同行だったので、
「これは、とんでもない人と同行させられたぞー。今日は一体どうなるんだー?」
と思いました。
栢野(かやの)さん:「さあ、次行こう!!」
私:「今の会社の社長にあんな事して大丈夫なんですか?」
栢野(かやの)さん:「さー次!!」
栢野(かやの)さん:「よーし、この会社行ってみるか!!」
と次の会社に入る。
受付さん:「こんにちは。何か御用でしょうか」
栢野(かやの)さん:「どうも栢野(かやの)です。社長、お願いします!!」
受付さん:「え? 社長ですか」
栢野(かやの)さん、受付さんを振り切り、勝手に事務所の奥にどんどん入って行く!!
他の社員の方々も驚いている。
どうも一番奥のデスクに座っているのが、社長と睨んだらしい。
そして、社長らしき人の前に来て名刺を出す。
栢野(かやの)さん:「社長、どうも栢野(かやの)です。ちょっとお話があります。」
社長:「話? どんな」
栢野(かやの)さん:「先日、出されていた求人広告に関してです。」
社長:「突然仕方ないなー。ちょっと奥の部屋で話そう。」
栢野(かやの)さん:「ありがとうございます。」 アプローチはめちゃくちゃだが、とにかく応接に通される。
しかし、栢野(かやの)さん、何とこの会社が過去に出した求人広告のコピーを持って来ている。
栢野(かやの)さん:「社長、これまでの求人広告での反応はどうでした?」
社長:「出すたびに反応が悪くなっている。もう当分は出さないよ。」
栢野(かやの)さん:「私が過去の求人広告の内容を見たところ、社長の考え方や会社のセールスポイントが どこまで書かれてあるか疑問です。これじゃあ応募は少ないでしょう。」
社長:「そんな事言っても、それは、あんたと同じ会社の人が作った広告だぞ!!」
栢野(かやの)さん:「できる営業マンも居れば、カスも居ます。 私に社長の話を聞かせてください!! 私が必ず応募者が集まる原稿を作ります!!」
社長:「カスも居ますって、俺はカスにお金を払ったのか!!」
栢野(かやの)さん:「残念ですがそうです。しかし、私が挽回します!! 前向きに考えましょう。 社長は、なぜこの会社を創ったのですか 我々には想像もできない苦労があったでしょう?」
社長:「うーん、それはいろんな事があった。」 栢野(かやの)さん:「社長の人生、会社の歴史を理解せずに、良い求人広告はできません!! 是非、これまでの苦労話を聞かせてください!!」
という感じで、いつの間にか社長の苦労話になり、その後、昼飯も食わずに2時間取材した。
栢野(かやの)さん:「社長、今日は素晴らしい社長と会社の話を伺えました。 次回は、今日の社長のお話を元に、良い求人広告を作って持参しますので、 それを見ていただき納得していただいたら、再度求人広告を出してください!!」
社長:「うん。俺が納得するモノだったら考えてやる。」
*実際、この会社は次回訪問で、新しい求人広告の原稿を持参し受注した!!
その後もこんな調子で、9時半から17時まで昼飯も食わず既に15社程度訪問し、その内、 5社の社長を引っ張り出し具体的な商談にした!!
*私はこの一日も営業同行で、「自分が今までやって来たのは営業ではない。お遊びだ。」 と思い知らされた。
しかし、栢野(かやの)さんの大胆且つ緻密な営業を見て、めちゃくちゃモチベーションが上がった。 「営業って、何ておもしろい仕事なんだろう!!」と思った。
26年経過した今でも思い出す一生忘れられない一日になった。
普通、飛び込みセールスで、こんなに高い確率で社長に会えることは無い。
仮に社長が出て来ても、そんなに話し込めない。
ところが、栢野(かやの)さんは、話し込む、と言うより、 「聞き込む」ことができる。
日経新聞はもちろん、日経ビジネス、日経ベンチャー、日経産業新聞、日刊工業新聞、その他、様々な 業界誌、ビジネス書などを読みあさっているので知識が幅広く深い。
また、様々な社長との対話から実学も積んでいる。
栢野(かやの)さんの営業を見ると、過激なアプローチに目が奪われがちだが、
実は、下記のような内容の濃い営業をしていた。
①お客様の話を傾聴する
⇒②それを自分なりに整理して求人広告のコンセプトを作る
⇒③自分の思った原稿を妥協せずに作る(よく制作担当と喧嘩する)
⇒④作った原稿をお客様に自信を持ってプレゼンする(妥協せずお客様とも必要なら喧嘩する)
⇒⑤必ず成果を出してお客様の信頼を勝ち取る
⇒⑥定期的なコンタクトを欠かさず固定客にする
*上記①~⑥のプロセスは、人材紹介の仕事でも全く同じだ。
栢野(かやの)さんは、新規開拓力も凄いが、お客様のリピート率が際立って高かった。
実際に、私は栢野(かやの)さんのお客様を数十社引き継いだことがあったが、
同じレベルのサービスが提供できず、何社か大事なお客様を失ってしまった。
栢野(かやの)さんは、リクルート退職時、送別会で泣きじゃくる我々後輩を一喝した。
「泣いている暇があったら、お前たちが栢野(かやの)になれ!! (喝)」
合掌。
※弊社HP↓。