昨日の続きです。
外資系大手金融機関のシステム部門責任者(今で言うCIO)の案件を、新卒の私が担当する
ことになったのです。
状況は既に大手外資系サーチファーム(多分、コーンフェリー、スペンサー、ラッセル)にオーダー済みで
一人有力な候補者が居るとの事。
推測ですが、その候補者は、IBMの部長クラス。
何としても、それ以上の候補者を探さないといけない。
そんな感じで焦っている折、取締役営業部長のMさんが来て、
Mさん:「武谷(たけや)君、この前の案件のリサーチは進んでいるのか?」
私:「いえ、あまりに難しいので、どうしようかと考えているところです。」
Mさん:「考えている!! そんな暇があるのか!! 何もしないで勝手に候補者が現れると思ったら
大きな大間違いだ!! 早く動け!!」
こんな感じで、大学を卒業して3ヶ月しかたたない私に、こんな事を言うのです。
私:「いつも週刊誌を読んで、昼寝ばかりしているのに、偉そうに何を言ってるんですか!!
Mさんは、探せるんですか!! あんな難しい人を?」
いい加減にせんか!! この不良役員が。誰のおかげでオマンマ食うとるんじゃ!!
Mさん:「僕に探せるわけないだろう!! 君の仕事だ!! 君が探せないなら、なぜ他の人の協力を
積極的に仰がないんだ!!」
私:「そうしようと思っていたんです!!」
M:「思う前に動け!! このノロマ!! そんなんじゃ、社会で通用しないぞ!!」
こんな、めちゃくちゃな事、今の新卒が取締役に直接こんな事を言われたら、即日辞めますよね?
このMさんは、営業会議でも飲み会でも、目をつけている社員をボロクソに詰めるんです。
それも多くの人の前で。
いやー、頭に来ました。
当時、地下鉄の中でも無礼な奴は殴ったりしていましたので、Mさんも殴ろうかと思いました。
そうすれば、さすがにクビでしたね。
とにかく、Mさんを見返す意味でも、絶対にピカピカの候補者を探してやろう!!
私は、早速、エンジニア系のコンサルタントのボスであり、最も人望があるNさんの所に頼みに行きました。
Nさんに、これまでの一部始終を話して、どうやったら候補者が見つかるか? 聞きました。
Nさん:「システム開発系の管理職経験者で英語ができる人材か? 数百人のデータがファイリングされて
いるはずだよ。まずは、片っ端から目を通してみてみなさい。」
私:「ありがとうございます。やってみます。」
それからは、毎日3時間は、候補者データの検索とキャリアチェックの日々が1ヶ月以上続きました。
ざっと300名程度を抽出して、その中から、お客様の要求を満たせそうな人材か否か、職務経歴書を見て
チェックするのです。
システム開発経験10年以上の人は多数いらっしゃるのですが、ネックは三つです。
・部下100名以上のマネジメント経験者。
・英語が堪能であること。
・できれば、IBMの人。
当時は、IBMを辞める人など非常に少なく、市場には皆無に近い状況でした。
更に、IBM並みの給料を出せる会社が無かった。
そんな状況下、300名から30名ぐらいに絞り込んで、お客様の常務と人事課長のところに持参しました。
常務:「うーん、ざっと見る限り難しそうだね。これが精一杯なの?」
私:「いや、これはあくまで初回のリストです。今日のお話を参考に次回はもっとご要望に近い人を
探してきます。」
とは言ったものの、トホホです。
1ヶ月費やしてリストアップした30名の内、お一人も面接に進まない!!
やっぱり無理だったか??
次回と言ったものの、何の当ても無いぞ。
もう社内のデータベースでは無理だ。
思い切って、公募してはどうか?
当時、日本IBM社内に米国本社からの介入があり、外人が上層部に入って来ている。
それをおもしろくないと思っている日本人幹部は、少なからず居るだろうと。
そのような考えから、日経新聞の求人欄に、大きな匿名広告(求人社名を隠し興味ある人の登録を促す)
を掲載することにしました。
・キャッチコピー:「貴方は、今の椅子に満足ですか?」
・サブキャッチ:「外資系大手金融機関がシステム部門の統括責任者を求めています。」
・資格
①システム開発経験10年以上
②部下100名以上のマネジメント経験者
③英語堪能
・待遇:ご相談の上、現在の条件以上を保証。
さあ、これで、有力な候補者が集まるのか!?
完全なギャンブルですが、やってみよう!!
この結果は、明日の完結編に続きます。
合掌。